研究実績の概要 |
本年度は我々が開発した多置換[2.2]パラシクロファン化合物をビルディングブロックとして用いて研究を行い以下の成果を得た。 ①bis-(para)-pseudo-ortho-四置換およびpseudo-ortho-二置換[2.2]パラシクロファン骨格を用いて、環状トライアングル型パイ共役系を構築し、光捕集アンテナとしてフェニレンエチニレンを置換した光学活性A字型分子を合成した。この分子は大きなモル吸光係数、良好な蛍光発光量子効率を示すのみならず、大きな円偏光発光異方性因子で円偏光発光し、極めて高い円偏光発光輝度値を示すことが分かった。 ②pseudo-meta-二置換[2.2]パラシクロファン化合物をビルディングブロックとして用い、ortho-オリゴフェニレンが積層した片巻らせん分子を合成することに成功した。特にortho-キンケフェニル積層分子は大きな円偏光発光異方性因子で円偏光発光することを明らかにした。これまでに光学活性ortho-オリゴフェニレンが合成されているが、本研究はortho-オリゴフェニレンが円偏光発光した最初の例である。 さらに、本年度はアキラルな4,5,12,13-テトラブロモ[2.2]パラシクロファン化合物をビルディングブロックとして用い、9,9-ジメチルスタナフルオレンとパラジウム錯体を触媒としてクロスカップリングさせることで、トリフェニレンが積層したanti-[2.2](1,4)トリフェニレノファンを合成することができた。これまでに、[2.2]パラシクロファン骨格を基盤とする多環芳香族炭化水素積層分子がいくつか報告されているが、anti-[2.2](1,4)トリフェニレノファンはこれまで報告例がなかった。単結晶X線結晶構造解析、ならびに各種分光法によってその構造と物性を明らかにした。
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