研究課題
本研究課題は金属イオンと有機配位子から構築される配位高分子の複雑な自己集積過程を理論計算による網羅的探索によって解明することを目的とし,1.亜鉛イオン,ケイ素フッ化物アニオン,窒素系配位子からなる配位高分子のビルディングユニットの自己集積過程, 2.二価金属イオン,カルボキシレート配位子,窒素系配位子からなる金属二核錯体のビルディングユニットの集積過程を対象として研究を進めた.1については昨年度までに,エネルギー障壁の低い平衡反応過程(配位子が金属に配位したり離れたりする過程)が中間状態として存在し,この中間状態を経て骨格形成へとつながるエネルギー障壁を越え,ユニット形成が進行することを明らかにした.この過程は,合成実験において言われてきた「平衡過程を経て骨格が組み上がる」という直感的理解を,理論計算で初めて明らかにしたものであり論文として報告した.これら知見をもとに,最終年度は2の金属二核錯体ユニットの自己集積過程の解明を中心に進めた.金属イオンとして亜鉛または銅を用い,カルボキシレート配位子,窒素系配位子,そして水(溶媒分子)を反応系として網羅探索を行った.亜鉛の場合,窒素系配位子や溶媒分子を含まない反応経路では,ユニット前駆体の形成されず,骨格形成が進まない結果となった.一方で,窒素系配位子や溶媒分子を含む反応経路では窒素系配位子もしくは水が亜鉛に配位することでユニットを安定化し,骨格形成が促されることが明らかとなった.銅の場合は,ユニット前駆体が形成した後,この前駆体に水分子が配位し,この水と窒素系配位が入れ替わることでユニット形成が進行していることが明らかとなった.同系の骨格であっても,金属ごとに骨格の形成過程が異なり,溶媒分子も骨格形成過程に重要な役割を果たしており,溶媒の選択も重要であることを示している.本成果に関しては論文投稿する段階まで進めることができた.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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