「アルカリ金属イオンの拡散と水和状態の変化によるPBナノ粒子緻密薄膜の起電力発現」の起源を明らかにするため、透明導電(ITO)ガラス基板上に作製したPBナノ粒子緻密薄膜を用い、カリウムやナトリウムイオン水溶液中でフェリ/フェロ酸化還元に由来する自然電位の変化の濃度依存性を調べた。僅かな変化が見られるものの、膜厚等の成膜条件や電極構造の最適化が必要であることが分かった。また、現状では発生する電流量が小さいと推測される。これは、緻密薄膜ではPBナノ粒子と水溶液との接触面積が小さいこと、また、内部に無数の粒子界面が存在し、カリウムやナトリウムイオン侵入(拡散)を阻害しているためだと考えられる。そこで、ナトリウムイオンを解離できる水溶性有機高分子を複合化したPBナノ粒子薄膜の作製を行った。最適な膜構造を得るため高分子の含有量を変化させた。しかし、現状では膜作製が可能であることが分かったが、ナトリウムイオン水溶液中で膜構造崩壊が起こり、電位変化における顕著な効果が得られていない。PB結晶格子内外でカリウムやナトリウムイオンの水和エントロピーと拡散速度が熱力学的に異なることを考慮すると、電位変化の温度依存性を調べることが、今後有効な手段であると考えられる。濾紙にPBナノ粒子分散液を高濃度含侵させ、PB担持濾紙膜を作製した。その担持量を変化させた。変化量が少ないものの塩水の移動(水の上部蒸発)に伴い、塩濃度とPBの担持量に依存して系統的変化する起電力と電流量を捉える方法を種々検討した。その中で、PB担持濾紙膜を上下運動させることで、その動作に同期して起電力と電流量が変化する現象が見出された。これは、PBナノ粒子表面での塩水の機械的な動きがPB結晶格子内外でナトリウムイオンの拡散に影響を与えている可能性を示した。僅かな状態(動的)変化がフェリ/フェロ起電力を生み出すことが分かった。
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