研究課題/領域番号 |
21K18975
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 さやか 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10361510)
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研究分担者 |
菊川 雄司 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (10637474)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 固体酸 / 固体電解質 / 金属酸化物 / 赤外分光法 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実施計画に記載したように、今年度は典型金属であるビスマスに着目し、金属酸化物クラスター(ポリオキソメタレートアニオン)と単核ビスマスイオン(Bi3+)との結晶性複合体の合成を行った。その結果、7種類の複合体が得られ、単結晶X線構造解析を行った。次に、本研究テーマ(酸性質)と深く関わるプロトン伝導性について、単結晶試料を粉砕した粉末をペレット成型し、インピーダンス測定により評価した。その結果、7種類の複合体の組成式は似通っているものの、ビスマスイオンの配位子の種類や数、細孔体積(細孔割合)、結晶溶媒の種類に依存してプロトン伝導性が大きく変化した。金属酸化物クラスターの関連する研究の多くは1、2族のイオン、あるいは、遷移金属イオンをターゲットとして進められてきた、今回、典型金属イオンを取り込むことができたことが大きな成果であり、論文発表を行った。今後は、ビスマスイオンの表面に露出するs電子の特長を生かした化合物の合成とプロトン伝導を含む酸性質を見出した。また、上記成果を含むこれまでの研究室内の成果をとりまとめ、金属酸化物クラスターを含む結晶性複合体のプロトン伝導性に関する総説を執筆した。さらに、国際共同研究(中国ハルビン大学・Xikui Fang教授)により、ポリオキソメタレートアニオンを含む有機無機複合体について、低温・加湿下で実用材料に匹敵するプロトン伝導性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施報告書に記載のとおり、典型金属(ビスマスイオン)の活用ができるようになったため。
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今後の研究の推進方策 |
最近、ビスマスイオンからなる多核錯体と酸化グラフェンとの複合体が、実用レベルの高プロトン伝導性を示すことが報告された。この論文では、高プロトン伝導性の起源に関する言及はないが、ビスマスイオンと酸化物イオンとの結合は錯体分子内部を向き、ビスマスイオンが錯体分子表面に露出することから、プロトンはビスマスイオンの孤立電子対(6s2)と相互作用しつつ伝導すると考えている。2021年度において、単核ビスマス錯体(配位飽和)を合成単離した生かし、配位不飽和なビスマスイオンを構成要素とするPOMが報告されつつあるが,その機能は未開拓である.既報から本申請研究に適したPOMを選択し,複合化も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
残り30万円は研究分担者に配分したため
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