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2022 年度 実施状況報告書

フレームワーク結晶中におけるロタキサンの回転運動を利用した新奇強誘電体材料の創製

研究課題

研究課題/領域番号 21K18977
研究機関金沢大学

研究代表者

酒田 陽子  金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70630630)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2025-03-31
キーワードロタキサン / フレームワーク結晶 / 動的特性 / 金属錯体
研究実績の概要

本研究は、様々なロタキサン骨格を結晶構造内に配列させ、ロタキサンの輪分子のナノメートルスケールの回転運動を電場などの外部刺激に応答させて制御し、新規な強誘電体材料の創製を目指すものである。昨年度の研究において、新たなロタキサンモチーフとして2,3-ジアミノトリプチセンとPd(II)イオンからなる錯体が様々なクラウンエーテルとの相互作用によりロタキサンが形成することを見出した。今年度は、この錯体の輪分子にDB30C10あるいは27C9を用いたロタキサンの結晶構造解析に成功した。二つの結晶構造について錯体周りの構造を比較すると、環サイズの小さい27C9の方がDB30C10よりも錯体骨格にサイズがフィットし、水素結合形成による安定化を受けやすいことが明らかとなった。また、27C9を用いたロタキサン結晶については27C9が四ヶ所にディスオーダーしている様子が観測され、結晶状態においても輪分子の回転運動が可能であることが示唆された。
さらに、このロタキサンの形成速度を加速させる試みも行った。溶液中において、単純に軸分子となるPd(II)錯体と輪分子の27C9を混合した場合は、半減期122分とロタキサン形成は非常にゆっくりと進行する。この形成速度を加速させるため、様々な加速剤の添加実験を行った。Pd(II)イオンに配位する単座配位子を種々検討した結果、ハロゲン化物イオンを加えると、形成速度が最大27倍加速されることを見出した。これは、今後類似のロタキサンモチーフを構築する上での、効率的なロタキサン合成手法となり得る。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究において、Pd(II)錯体と27C9から形成されるロタキサン構造の結晶構造解析に成功し、今後結晶構造内のロタキサンの輪分子の動的特性を調べる上で重要な知見が得られたと考えられる。そのため、研究は概ね順調に進展したと判断できる。

今後の研究の推進方策

2,3-ジアミノトリプチセンとPd(II)イオンからなる錯体と様々なクラウンエーテルが相互作用することによりロタキサン構造が形成できることについてすでに報告しているが、軸分子錯体の構成要素となるフェニレンジアミン誘導体の置換基効果についても今後明らかにする。特に、どの程度の嵩高さの置換基を導入した場合にロタキサンの輪分子が通り抜けられなくなるかという点や、置換基の種類によりロタキサンの安定性がどのように変化するかなどについて調べることで、結晶状態での輪分子の運動性を制御するための指針が得られると期待される。
また、ジフェニルビオロゲン誘導体とクラウンエーテル誘導体から形成される[3]擬ロタキサンをビルディングブロックとした多孔性配位高分子のようなフレ-ムワーク結晶の構築についても引き続き検討する。

次年度使用額が生じた理由

2022年度に、多孔性配位高分子のようなフレームワーク結晶の構築を行い、その結果について共同研究ならびに学会発表を行う予定であったが、当初予定したようなロタキサン構造を含むフレームワーク結晶はまだ得られていない。一方で今年度は、昨年度見出されたPd(II)錯体から形成されるロタキサンモチーフの性質についての性質をより詳細に調べる研究を遂行したため、未使用額が生じた。このため、ロタキサン構造を含むフレームワーク結晶の構築とその詳細な運動解析や学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Synthesis of amphiphilic chiral salen complexes and their conformational manipulation at the air-water interface2023

    • 著者名/発表者名
      Shigehisa Akine, Keisuke Nomura, Mizuho Takahashi, Yoko Sakata, Taizo Mori, Waka Nakanishi, Katsuhiko Ariga
    • 雑誌名

      Dalton Transactions

      巻: 52 ページ: 260-268

    • DOI

      10.1039/D2DT03201E

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Speed Tuning of the Formation/Dissociation of a Metallorotaxane2023

    • 著者名/発表者名
      Yoko Sakata, Ryosuke Nakamura, Toshihiro Hibi, Shigehisa Akine
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 62 ページ: e202217048.

    • DOI

      10.1002/anie.202217048

    • 査読あり
  • [学会発表] オリゴエーテルとの相互作用を利用したメタロナノベルトの形成と構造変換の速度論的制御2023

    • 著者名/発表者名
      中村亮介・酒田陽子・秋根茂久
    • 学会等名
      日本化学会 第103春季年会 (2023)
  • [学会発表] 速度論的制御を鍵とした新規金属錯体型ホスト・ゲストシステムの創製2022

    • 著者名/発表者名
      酒田陽子
    • 学会等名
      第19回 ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Kinetically-Controlled Supramolecular Host-Guest Systems2022

    • 著者名/発表者名
      Yoko Sakata
    • 学会等名
      Canadian Chemistry Conference and Exhibition 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Development of Metallonanobelt and Their Derivatives Based on Kinetically-controlled Self-assembl2022

    • 著者名/発表者名
      Yoko Sakata
    • 学会等名
      錯体化学会第72回討論会
    • 招待講演
  • [学会発表] 速度論的テンプレート効果を利用した環サイズの異なる自己集合型メタロナノベルトのサイズ選択的構築2022

    • 著者名/発表者名
      中村亮介・酒田陽子・秋根茂久
    • 学会等名
      第19回 ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム
  • [学会発表] 形成・解離速度をチューニング可能な金属錯体型動的ロタキサンの構築2022

    • 著者名/発表者名
      酒田陽子・日比敏博・中村亮介・秋根茂久
    • 学会等名
      第32回基礎有機化学討論会
  • [学会発表] 速度論的テンプレート効果を用いた自己集合によるメタロナノベルトのサイズ選択的構築2022

    • 著者名/発表者名
      中村亮介・酒田陽子・秋根茂久
    • 学会等名
      第32回基礎有機化学討論会
  • [学会発表] 速度論的テンプレート効果を用いた自己集合による環サイズの異なるメタロナノベルトの選択的構築2022

    • 著者名/発表者名
      中村亮介・酒田陽子・秋根茂久
    • 学会等名
      錯体化学会第72回討論会

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公開日: 2023-12-25  

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