研究課題/領域番号 |
21K18979
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 健 京都大学, 化学研究所, 教授 (30258123)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | フォノン / 非晶 / モルフォロジー / 高分子薄膜 / MAIRS / 構造パラメータ |
研究実績の概要 |
テフロン(PTFE)のシートを引っ張って伸ばし,シート内部に分子が「ほぐれた」状態を作り出すと,化合部としてはなにも変化していないのに,赤外スペクトルに1240 cm-1付近に顕著な変化が現れた.これは,過去の研究からC-F結合が分子間で双極子間の振動相互作用が伝播して生じたフォノンに由来するバンドである.このバンドは,さらにATR測定から得たスペクトルをもとに計算して得たバルクの縦光学モードの波数に比べて明確に低い位置にあることから,表面モードにカテゴライズできるとわかった.すなわち,シートを引き延ばすことで表面モードが増強したということは,シート内部に「表面」が増えたことを意味し,これが分子のほぐれを意味する. この結果をもとに,ほぐれた量を定量化する目的と,より簡便な表面モードの見極めを目指して有機フッ素材料を薄膜化し,その赤外多角入射分解分光(MAIRS)スペクトルを測って議論することにした.薄膜はスピンコート法で作製し,表面のモルフォロジーを観察する必要があるためAFMによる観察も併用した.化合物には鎖長C8のRf鎖を側鎖に持つPoly(perfluoroalkyl)acrylate(PFA-C8)を用い,これをシリコン基板上にスピンコートした.この膜を機械的にこすって膜を荒らし,その結果,MAIRSのOPスペクトルのみにフォノンモードが現れ,その強度がこすることで増強することを確かめた. このあたりで分光器の故障とコロナの状況変動による学生の研究時間減少などが重なり,予定していた研究が急激に停滞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主力として使っていた分光器の調子が悪いことが多く,長期間に渡り修理に出さざるを得なかったこと.
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今後の研究の推進方策 |
分光器の状態が回復したので,予定通り,研究を復活させる.学生の卒業と入学のタイミングが悪く,引継ぎができなかった分,例年に比べると遅れが目立つが,これから急ピッチで進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
分光器の不調とコロナによる実働の遅れにより,研究の進捗に遅れが生じた.研究計画そのものに変更はないため,単純にお金を繰り越してR4年度に遅れた分を実行する.
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