研究課題/領域番号 |
21K18987
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
亀尾 肇 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50597218)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 無機化学 / 錯体化学 / 触媒 / 炭素-炭素結合活性化 |
研究実績の概要 |
分子性触媒を用いて炭素-炭素結合を自在に変換する反応の開発は、現代化学でも挑戦的な課題の一つである。特に、環歪みのない炭素-炭素単結合の変換は現在の触媒技術を用いても極めて難しい。これは、一般的な炭素-炭素単結合の切断法の鍵中間体が、遷移金属と炭素-炭素 σ 結合周辺との立体反発により生成しにくいためである。申請者は、電子移動に注目した新しい方法論を着想し、分子性触媒を用いて四級炭素間の炭素-炭素結合の切断を実現した。本研究の目的は、その知見を足掛かりに、四級炭素間の炭素-炭素結合を触媒的に変換するための学術的知的基盤を構築することにある。さらに、その知見に基づいて、四級炭素間の炭素-炭素結合変換を基軸とする、効率的な触媒反応の開発に取り組む。 当該年度では、まず四級炭素間の炭素-炭素結合の切断を鍵要素とするオレフィンのヒドロアルキル化反応の最適条件下を探索した。ニッケル触媒および還元剤を中心に反応条件を詳細に検討することで、反応の高効率化を達成した。また、錯体触媒と反応基質との化学量論反応を詳細に検討して、反応中間体を同定および単離することで、四級炭素間の炭素-炭素結合の切断機構に関する重要な知見を得た。さらに、反応基質の置換基効果を調査する中で、ヒドロアルキル化に加えて炭素-水素結合の活性化が同時に進行する、新しいタイプの触媒的変換反応が進行することも見出した。今後は、これらの知見を基に、更なる反応の高効率化、反応機構の解明に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ニッケル錯体触媒を用いることで、四級炭素間の炭素-炭素結合の活性化を経る、オレフィンのヒドロアルキル化反応を開発してきた。しかしながら、その収率は低く、高効率化が課題となっていた。そこで、当該年度では反応条件を精査したところ、アルコール類の添加により、収率が中程度 (60% 程度) まで改善されることを見出した。加えて、反応基質に置換基を導入するだけで、新しいタイプの触媒反応が進行することを見出した。これらの反応についても反応条件を精査し、中程度の収率にて目的物が得られるようになっている。さらに、反応機構に関する知見を得るため、錯体触媒と反応基質との反応を検討し、触媒反応の中間体の単離・同定を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
触媒反応の効率化に取り組み、良好な収率 (80% 以上の収率) で目的生成物を得る条件を引き続き探索する。さらに、ヘテロ原子の導入を可能とする新しいタイプの反応(オレフィンのアミノアルキル化、ボリルアルキル化、シリルアルキル化など)の開発を検討する。それらと並行して、同定が実現できた反応中間体の反応性を調査することで、触媒反応の詳細を明らかにしてゆく。さらに、DFT 計算も取り入れることで、反応機構を明らかにする。それらの知見を反応の効率化や新反応開発にフィードバックすることで、研究の一層の進展を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に、反応中間体の単離に加え、その電子状態の解析を行う予定であったが、中間体が想定よりも不安定であり、目的物が十分に得られなかった。そのため、電子状態解析まで実験を行うことができず、計画の変更が必要となり未使用額が発生した。 次年度に反応中間体の電子状態解析を行うため、未使用額を使用してリサイクル機能付 HPLC を購入して、中間体の迅速合成を進める。
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