水熱反応を利用した無機材料の合成は高温高圧下の密閉容器内で行われるため,反応過程に関する情報の取得には困難が伴う。本研究では,光透過窓を有するオートクレーブを用い,分光学的手法による水熱反応過程のリアルタイム評価を行った。目的物質として可視光応答光触媒であるSrTiO3:Rhを選択し,反応進行に伴う光吸収挙動の変化を観測した。分光学的手法として,プローブによる反射光測定と画像解析を用いた。測定によって得られた応答の変化から反応速度論解析を行った。 反応物としてTiO2 (anatase),Sr(OH)2,Rh(NO3)3を水とともにオートクレーブに封入した。反射光測定ではプローブを光学窓に接続し,画像解析では市販のビデオカメラを用いて光学窓を通じ内部の撮影を行った。SrTiO3:Rhの生成に伴って,吸収端が原料TiO2に由来する380 nmから550 nm程度まで次第に拡大していく様子が測定できた。これは生成物のUV-vis拡散反射法による測定結果と概ね一致していた。400 nmにおける吸光度は約100 minから増加した後,200 min程度で値がほぼ一定となっていた。また,容器内部温度が180℃に到達する前に吸光度の上昇が開始し,180℃到達時には吸光度が一定に達することがわかった。カメラ撮影より,反応の前後で試料の色調が白色から黄色に変化していることが観察された。これらの画像について,RGB値を取得しBlue/Greenとしたところ反射光測定のように反応時間に対応した連続的な変化がより簡便に得られた。 以上の測定値を用い,小澤-Flynn-Wall 法を適用した Arrhenius プロットは線形を示し,活性化エネルギーが算出された。また,Avramiプロットによる係数nを算出し,結晶成長メカニズムを議論した。
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