研究課題/領域番号 |
21K18998
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
桶葭 興資 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50557577)
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研究分担者 |
西村 俊 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (20610067)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 相転移 / 電子 / 水素 / ビオロゲン / イソプロピルアクリルアミド |
研究実績の概要 |
環境エネルギー問題を背景に太陽光エネルギーを用いた水の完全分解に関する研究は、本多-藤嶋効果 (1972)を皮切りとして様々な触媒システムが開発されている。特に「紫外光ではなく可視光の利用」や「光エネルギーから物質変換の効率向上」が重要課題とされてきた。太陽光によって無尽蔵にある水から水素と酸素をつくる技術が成熟すれば、水素エネルギー社会への移行が現実的となる。得られた「水素」は石油の代替物質として期待されているだけではない。水素と酸素を燃料電池によって水に戻し電気エネルギーを得ることで、究極の物質循環系が構築できる。本研究では、高分子のコイル・グロビュール転移を駆動源とした電子輸送組織の構築を目指し、特に、高分子の転移挙動を電子輸送の駆動源とした高分子担持型の触媒ナノ粒子を設計している。電子輸送分子Viologenの酸化還元変化に誘起される高分子のコンフォメーション変化(伸張/収縮)(Okeyoshi, et al, Angew Chem Int Ed 2019) を利用して、新たな電子輸送メカニズムを提唱する。高分子の転移挙動を用いることで、拡散に依存していた律速段階の解決を目的とする。以下に主な研究内容を記す。1. 電子輸送分子Viologenを持つ高分子を内包した人工光合成ゲルの設計指針を作成し、階層的構築の重要性を示した。2. 側鎖にViologen分子を持つ温度応答性の共重合系高分子を作製した。ここでは、分子量の制御、Viologen分子の導入率制御、および末端基の検討を進めた。同時に、Viologen導入率によって、酸化/還元の高分子転移が可能な温度域を制御した。上記の内容について本研究に関わる学会発表2件行い、活発な議論を通して進めた。これを基に本研究の多角的なアプローチが進み、二年目の研究を遂行するにあたり重要なステップを踏んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の学会発表は、招待講演1件を含めた2件を通して活発な議論を重ねた。オンライン形式による学会開催が続く中、セッション内の研究者間コミュニケーションを通して、これまでの進捗の重要性を再確認した。今後も持続可能な社会に向けて、新しい材料設計チャレンジが期待される。コイル・グロビュール転移を示す高分子の設計について、分子量、Viologen分子の導入率制御、末端基の検討を行い、順調に進んでいる。これらは、マーカス理論にある、電子輸送に有効な分子間距離を満たすことが期待され、これまでの電荷分離を示すシステムにとっても重要なモデルになる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、高分子の作製・物性評価を進め、コイル・グロビュール転移を駆動源とした電子輸送組織の構築を目指す。研究計画の大きな変更は無く、本研究の大目的に挑戦する。これまでに作製した高分子と触媒ナノ粒子の複合体を調製するにあたって、研究分担者と共に検討を進める。この際、触媒ナノ粒子の既往研究から予想される、分子とナノ粒子表面の距離についても吟味し、本研究の複合体を調製する。そのために必要な実験環境や実験装置の整備を同時に進める。上記の研究内容を発信していくため、オンライン形式含めた国内外の学会にて発表、および査読付学術論文への発表を見据える。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はオンライン形式による学会開催が続き旅費が不要となったこと、および所属機関の運営費交付金によって研究環境整備資金が配分されたたため、本研究課題の未使用額(次年度使用額)が発生した。新年度以降の研究費と合わせた使用計画として、設備備品費、消耗品費、旅費、人件費、およびその他の費用に充てる。
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備考 |
https://researchmap.jp/kosukeokeyoshi
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