研究課題/領域番号 |
21K19000
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関 隆広 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40163084)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 自由界面 / グラフト鎖 / RAFT重合 |
研究実績の概要 |
基板表面へ高分子鎖を結合させる操作は基板の表面修飾において頻繁に行われる。中でも、表面開始グラフト重合は高密度ブラシ鎖を形成させることができ、コンフォメーションと配向に固有な特性と機能が発現する。本研究は、通常行われている固体基板表面からのグラフト重合ではなく、モノマー膜の空気側の自由界面から開始する重合反応を行う新たな高分子合成のプラットフォームを構築することを目的とし研究を開始した。 計画では研究開始の試みとして市販のドデシルメタクリレートを想定したが、次のステップを意識してシアノビフェニルを有するメタクリレートモノマーの合成から開始し、このモノマーの膜に対して自由表面からのRAFT重合開始系の構築を試みた。令和3年度では、基板にモノマーを挟むことなく、片面を空気へ露出させた状況で安定した薄膜を得て、市販のRAFT剤にフッ素部位を導入 し、このRAFT剤をモノマー分子に少量混合させて、表面偏析させ、イリジウム錯体の光触媒の存在下、重合させる条件を種々検討した。 その結果、適切なモノマーの膜厚においてRAFT剤の量の条件を見出し、空気側から光で触媒を介して空気側から重合を進行させることに成功した。また、RAFT剤を表面偏析したのちにイリジウム光触媒をトップコートする手法が有効であることが分かった。しかし、重合が効果的に進行しているとはいえず、最適な成膜条件、光照射条件、重合条件の検討は来年度以降の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に、モノマー薄膜から空気界面へ偏析させたRAFT剤とイリジウム光触媒から液晶高分子の合成を検討した結果、重合が進行する条件を見出すことができた。これまで行われてきた溶液中での重合ではなく、薄膜のバルクでの重合が進行することを見出したことは重要な進展である。これらの成果をもって初年度としては順調な進捗であると考えている
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今後の研究の推進方策 |
自由界面からの重合開始系構築の予備的な検討の結果を得ることができたが、再現性や最適な実験条件を割り出すところに至っておらず、最適化は次年度の課題として残されている。検討を要する条件として、光照射波長と強度の最適化、成膜の膜厚、RAFT剤の混合割合、イリジウム光触媒の混合比及びトップコート条件の最適化などである。これらの条件が改善されたならば、空気表面からの重合挙動と規則構造形成について、さらにX線測定等でより詳細を評価していく。
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