研究課題
固体基板表面からの開始するグラフト重合は高密度ブラシ鎖を形成させることができ、固有なコンフォメーションと配向から特徴的な機能が発現する。本研究は、固体基板表面からのグラフト重合ではなく、モノマー膜の空気側の自由界面から開始させる重合反応を提案し、新たな高分子合成のプラットフォームの構築に挑戦する。具体的には、酸素存在下でも重合が阻害されにくいイリジウム錯体の光電子移動剤を組み込んだ可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合系にて本提案を検証する。自由界面の与える環境は、3次元的大きな自由度のある溶液と固体基板界面上の強く束縛環境との中間に相当し、こうした半束縛状態の界面環境での重合にて、どのような現象が含まれるかは未解明であり、高分子化学的の学術的な観点からも挑戦的な試みといえる。重合することで液晶性を発現するシアノビフェニルを持つメタクリレートを用い、炭化フッ素を導入したRAFT剤とイリジウム錯体を混合し、200 nm程度のモノマー薄膜をスピンコート法で作成し、100℃程度に加熱しながら紫外光照射を行った。この際、基板表面に液晶高分子で修飾することで、フッ素化RAFT剤は自由界面に偏析させることで、自由界面からグラフト重合の開始をさせた。RAFT剤が自由界面に存在することはXPS測定により確認した。結果、分子量約90000、分子量分布1.4の液晶ポリマーが得られることがわかった。このポリマーはスメクチック液晶構造を有することを斜入射X線測定により明らかにした。照射する光の強度を大きくすることで重合がより速く進み、平滑な膜を形成しやすいこともわかった。RAFT剤が自由界面に存在することから、自由界面からのグラフト重合に成功した。
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