研究実績の概要 |
昇華性を有する低分子化合物に粒子線固相重合法を適用し、昇華によるナノワイヤの単離を通じて、基板上に垂直に配向したナノワイヤを形成させることを試みた。C60薄膜を原料とした検討の結果、溶媒現像と比較し、昇華単離したナノワイヤは基板垂直方向により高い配向性を有している様子が観察された。種々の低分子化合物を用いた検討の結果、昇華によって単離されるナノワイヤが直立するためには,ナノワイヤ径が大きく高い剛直性が必要であることが示され、すなわち粒子線から与えられるエネルギーにより引き起こされる重合/架橋反応の反応性が高い必要があることがわかった。具体的には、ハロゲン化芳香族化合物および炭素-炭素三重結合を有する芳香族化合物であれば多くの市販試薬から直立ナノワイヤが形成できることが明らかとなった。加えて、連結ナノワイヤや同軸ナノワイヤ等のヘテロ界面を構築することや、垂直配向に由来する表面撥水性(構造撥水性)を確認し、配向制御が導く特性制御が可能であることを見出した。 2,3,6,7,10,11-ヘキサブロモトリフェニレン薄膜から作成した直立ナノワイヤを不活性ガス下、1000 ℃で焼成することで、炭素化しカーボンナノワイヤを得ることを試みた。事前の真空下、400 ℃の処理の段階で、臭素原子が系外に脱離していることがX線光電子分光によって確認され、続いて1000 ℃の処理を施した後に弾性反跳検出分析(ERDA)によってナノワイヤの水素量を相対評価したところ、400 ℃処理のナノワイヤと比較して有意に水素量が減少していることが確認され、水素の脱離による炭素化が進行していることが定性的ではあるが確認された。
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