本研究は、「二酸化炭素を原料とした常圧ダイヤモンド合成」を実現しようとする挑戦的かつ極めて新規性の高い研究である。本研究では、溶融塩中において、二酸化炭素と水からのダイヤモンド電解合成の原理実証、反応メカニズム解明および電解条件最適化のための方法論の確立を目的とする。さらに、電流効率やエネルギー効率を計算・考察し、産業応用ポテンシャルを見極めることも目的とする。 本年度は、昨年度に引き続き、炭素源としてCO2、水素源としてH2Oを用いて、「二酸化炭素と水からのダイヤモンド電解合成」の実証実験を行った。溶融塩中に予め酸化物イオンを導入しておき、CO2を吹き込むことで炭酸イオンが生成することを確認した。さらに、酸化物イオンを追加した上でH2Oをアルゴンガスと水蒸気の混合ガスとして吹き込むことで水酸化物イオンが生成することを確認した。この溶融塩中において、ニッケル板電極を用いて、種々の電位で電解を行った。得られたサンプルをラマン分光法および走査型電子顕微鏡で分析した結果、適切な電解条件で電解すると、ダイヤモンドが生成することが分かった。これとは別に、溶融塩中に炭酸イオンのみを含む状態で、ニッケル板電極を用いて種々の電位で電解を行った。得られたサンプルをラマン分光法およびX線光電子分光法で分析した結果、sp2混成軌道とsp3混成軌道の比においてsp3混成軌道の割合の高い炭素が析出する電解条件が明らかとなった。産業応用としては、付加価値の高いダイヤモンドを一定量以上生成させることができれば、電流効率やエネルギー効率が低くても、CO2が原料ということも考慮すれば、ポテンシャルは十分あると推定された。
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