研究実績の概要 |
鉄鋼などの製造業で生じる熱輻射を電気エネルギーへ効率良く変換できれば、環境への負荷を低減できる。現在実用化している光-電気エネルギー変換システムでは、熱輻射に含まれる近赤外より長波長側の電磁波を利用できない。一方で最近、強誘電体あるいはポーラー物質におけるシフト電流効果を用いた次世代型光-電気エネルギー変換デバイスが注目を集めている。このシフト電流効果による光-電気エネルギー変換では、開放端電圧に制限がなく、発電効率がバンドギャップに制限されないため、熱輻射を最大限に利用できる。しかしながら、シフト電流の表式は非常に複雑であるため、高シフト電流材料の設計指針は確立しておらず、材料開発はほとんど進んでいない。 本研究では、従来型の光発電システムとは全く異なる原理で駆動し、紫外-近赤外領域の電磁波を最大限に利用できる革新的光-電気エネルギー変換材料の創製を目指す。紫外-近赤外領域で強い光吸収を示すポーラー材料のプラットフォーム材料として、ハイブリッド間接型強誘電体が好適であると考えた。シフト電流を観測するためには電界ポーリングが必要である。したがって、キュリー点を制御することが必要になる。そこで本年度は、我々のグループがこれまでに強誘電性を実証してきたDion-Jacobson型層状ペロブスカイトCsNdNb2O7に大きな希土類イオンをドーピングすることにより、構造相転移温度の制御可能性を検討した。固相反応法を用いて、Cs(La,Nd)Nb2O7系のセラミックス試料を合成した。SPring-8のビームラインBL02B2において、温度可変放射光粉末X線回折測定を行い、構造相転移挙動を明らかにした。Laの固溶量の増加に伴い、構造相転移温度が単調に低下することが明らかになり、キュリー点を精密にチューニングできることを明らかにした。高シフト電流材料の設計に向けた有用な知見が得られた。
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