研究課題
二次元物質に関する研究はグラフェンの登場以来、様々な材料系で実施されてきたが、金属原子が二次元に配列した原子1個の厚みを持つ“金属アトムシート”の合成は非常に難しく未だに達成できていない。金属材料は次元性が変化することで、その表面物性が変化し、ナノ粒子、ナノクラスター、原子と粒子を構成する原子の数が減少するにつれ、触媒活性が劇的に変化することは金クラスターの研究等すでに明らかになっている。金属原子1層からなるアトムシートは、ナノクラスターと原子の間に位置すると考えられ、点である原子の反応性を面として取り出すことが可能になるともに、アトムシートに特徴的な化学反応性も大いに期待される。Niの場合、バルク結晶は、面心立方格子(FCC)であり、わずかに層の重なり異なる2層の繰り返し構造を持つ。Niの1原子層からなるNiアトムシートの構造はその繰り返しとなる1層を取り出した構造をもち、上下の繰り返しが無いためNiアトムシートの化学反応性はバルクNiと異なる可能性がある。本研究では、これらの可能性を実証する反応として、原子層ニッケルナノシートの合成とその化学反応性についてバルクのニッケルと比較しながら調査した。その結果、予測していた原子層Niナノシートの合成が高分解能透過電子顕微鏡観察により、明確に明らかとなり、Niアトムシートが合成できることを確認することに成功した。また、化学反応性においても、バルクのNiが水と反応する自由エネルギーと比較すると、Niアトムシートの方が自由エネルギーが正の方向に大きく、反応性が高いことが示唆された。
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化学工業
巻: Vol.73, No.11 ページ: 1-8