研究課題/領域番号 |
21K19030
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
下嶋 敦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90424803)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 多孔体 / シロキサン / エラストマー |
研究実績の概要 |
規則的に配列した直径2-50 nmのメソ孔を有するシロキサン(Si-O-Si)系材料は、高い熱的、化学的安定性と高比表面積、大細孔容積を有することから、触媒、吸着・分離材料、low-k/low-n材料、断熱材料、薬剤キャリアなど、幅広い応用がある。本研究では、フレキシブルな骨格と規則性メソ孔を有する新しいシロキサン材料を創出することを目的とし、従来困難であった柔軟性とメソ細孔形成を両立するための設計指針の確立を目指す。これにより外力に応じた細孔形状、細孔径、空隙率の変形に基づくゲスト種の吸脱着制御や、誘電率・屈折率・熱伝導率などのシームレスな制御に道を拓く。 本年度はナノ多孔体の組成検討および細孔構造・細孔変形の分析を推進した。ナノ多孔体の設計指針として(i)適度な柔軟性を有する組成であること、(ii)細孔中でシロキサンネットワークを形成すること、の二点が細孔構造の保持に重要であると考え、シロキサン分子の架橋方法や架橋密度制御について検討を行った。 その結果、100 nm程度の規則的なナノ細孔を有する多孔質シロキサンの合成に成功した。試料粉末に応力を加えながら光学顕微鏡で観察を行ったところ、弾性変形する様子が観察された。また、簡易的に応力を印加して小角X線散乱測定を行ったところ、規則的なナノ細孔に由来する構造周期を示すリングパターンが楕円となり、細孔が異方的に変形していることが直接的に示唆された。今後は細孔径を50nm以下のメソ孔領域まで小さくする検討を進め、柔軟性を有するメソポーラスシロキサンの実現を目指すとともに、得られた試料の細孔変形について詳細な分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに100 nm程度の規則細孔を有するシロキサン系多孔質エラストマーの合成に成功し、より小さいメソ孔領域への展開を進める段階に達した。また、小角X線散乱測定結果から、応力の印加による細孔変形を直接観測した可能性が示唆された。組成に関しても架橋密度の制御により弾性変形可能なシロキサンポリマーの組成を見出しつつあり、知見を積み重ねている。次年度では細孔変形に関する詳細な分析と組成検討を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討で小角X線散乱測定によりナノ細孔の変形が示唆されたため、次年度では詳細な分析を進める。並行して組成に関する検討も継続し、シロキサン骨格の架橋密度制御によりフレキシブルなメソポーラスシロキサン材料の実現を目指す。さらに、力学特性をはじめとする物性評価や細孔変形の分析を実施するために試料形態の検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗には大きく影響しなかったものの、コロナウイルスによる活動の制約があり当初予定していたほどの物品購入を行わなかった。また、旅費も使用しなかった。 繰越予算は次年度での物品購入・旅費・分析費用に使用する予定である。
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