規則的に配列した直径2-50 nmのメソ孔を有するシロキサン(Si-O-Si)系材料は、高い熱的、化学的安定性と高比表面積、大細孔容積を有することから、触媒、吸着・分離材料、low-k/low-n材料、断熱材料、薬剤キャリアなど、幅広い応用がある。本研究では、外力によって細孔形状、細孔径、空隙率をシームレスに制御可能な、フレキシブルな骨格と規則性メソ孔を有する新しい有機シロキサン材料を創出することを目的とした。 初年度は、直径約100 nmのシリカナノ粒子のコロイド結晶を鋳型として用い、その空隙で3-メルカプトプロピル基を有する鎖状ポリシロキサンとビニル基を有する環状シロキサンのチオール-エン反応を行い架橋シロキサン骨格を合成した。その後、塩基処理によってシリカ鋳型を除去することで、100 nm程度の規則的なナノ細孔を有する多孔質有機シロキサンの合成に成功した。試料粉末に応力を加えながら光学顕微鏡で観察を行ったところ、弾性変形する様子が観察された。また、簡易的に応力を印加して小角X線散乱測定を行ったところ、規則的なナノ細孔に由来する構造周期を示すリングパターンが異方的となり、細孔が異方的に変形していることが直接的に示唆された。 最終年度は、細孔径を数十ナノメートルの領域に縮小するための検討を行った。細孔壁の機械的強度を向上させるために有機シロキサンの架橋構造を制御し、かつ鋳型除去の際に低濃度かつ少量のKOH水溶液を用いて有機シロキサンの溶解を抑制することで、細孔径が55 nm以下の規則性細孔を有する有機シロキサン系エラストマーの作製に成功した。
|