研究実績の概要 |
TiO2を光触媒、グリセリンを電子源、溶媒を水とする物質変換反応系を探索した。また、他のアルコール類との比較を通じて、光触媒反応におけるグリセリンの特性を明らかにした。 試験管中の4-ニトロベンゼンスルホン酸(4-NBS)とグリセリンを溶解させた水溶液にTiO2を懸濁させ、アルゴン雰囲気下、水銀灯の光を照射した。気相中の二酸化炭素をガスクロマトグラフにて、液相を高速液体クロマトグラフにて分析した。3時間の紫外光照射の後、4-NBS中のニトロ基が還元された4-アミノベンゼンスルホン酸(4-ABS)が高い選択性で得られた。反応が完結した3時間以降は二酸化炭素の生成が停止し、また、副反応は進行しなかった。別途、太陽光照射下における実験を行ったところ、物質収支が高く維持され4-NBSの還元反応が進行した。 水中、TiO2光触媒による4-NBSの還元反応において、電子源となるアルコールの種類の影響について評価した。3時間の紫外光照射の後、4-NBSが完全に消費され、4-ABSが生成したものはグリセリンのみであった。1価のアルコールである1-プロパノールと2-プロパノールの場合、還元反応がほとんど進行しなかった。また、2価のアルコールであるプロパン-1,2-ジオールとプロパン-1,3-ジオールを用いたとき、還元反応が進行したが、グリセリンの結果と比較すると反応速度はかなり小さかった。また、隣り合う炭素原子に水酸基が一つずつ結合した1,2-グリコール型が電子源として有効に機能することがわかった。同様にエチレングリコールを使用した場合、プロパン-1,2-ジオールのときとほぼ同量の4-ABSが得られた。 以上のことから、グリセリンは水溶媒中の光触媒的還元反応において電子源として有効に機能すること、他のアルコールと比較すると電子源としてより利用しやすいことが明らかになった。
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