研究課題/領域番号 |
21K19034
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
保田 諭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90400639)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 水素同位体分離 / 燃料電池 / パラジウム / 触媒 |
研究実績の概要 |
本申請案では、固体高分子形燃料電池と固体高分子形電気化学水素ポンピングを組み合わせ、室温・大気圧で動作する省エネルギーでの重水素濃縮デバイスを提案し、基礎的動作を実証することを目的とする。1年目は、固体高分子形燃料電池で重水素が濃縮する電極触媒探索を行った。 はじめに様々な電極触媒からなる膜電極接合体の作製を行った。カソード極には白金微粒子触媒電極を用い、アノード極には白金微粒子触媒とパラジウム微粒子触媒、パラジウム膜触媒電極からなる膜電極接合体を3種類作製した。アノード極に軽水素と重水素の混合ガスを、カソード極には加湿酸素ガスを供給して発電し、室温における重水素濃縮能評価を行った。水素同位体ガスの利用効率50%での発電条件でアノード極に白金微粒子触媒とパラジウム微粒子触媒をそれぞれ用いた場合では、アノード極排出側の水素同位体ガスの混合割合は、供給側と比べて重水素濃度が0.6~0.5倍に希釈され濃縮効果がないことが明らかとなった。一方、同発電条件でパラジウム膜触媒を用いた場合、アノード極排出時に1.4倍に重水素が濃縮されることが明らかとなった。この濃縮能の違いは触媒形状に起因した水素同位体の酸化反応機構の違いを反映しているものと考えられる。微粒子状の白金およびパラジウム触媒では、その微粒子表面上で水素酸化反応が起きるのに対し、膜状のパラジウム触媒では水素同位体が膜中に溶解し拡散する過程が含まれる。この溶解・拡散過程における水素同位体効果が重水素の濃縮能発現に起因しているものと考えられる。以上、燃料電池のアノード極にパラジウム膜触媒電極を用いることで重水素を濃縮可能であることを初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、燃料電池で重水素が濃縮される電極触媒を明らかにすることができたため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では得られた知見をもとに、大きな水素同位体効果が発現すると考えられる様々な水素透過金属材料を用い、より高濃縮能をもつ電極触媒の開発を進める。また、燃料電池と電気化学水素ポンピングを組み合わせたシステムを構築、燃料電池で発電したエネルギーを水素ポンピングを駆動させるエネルギーに用い、系全体の消費エネルギーと濃縮能の相関性に関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等を受けて、令和3年度に実施予定だった学会参加や国内外出張を取り止めたことから、これらに係る経費が当初計画通りに使用できなかったため、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、次年度に予定している学会参加に係る費用や実験に必要な消耗品の購入に係る費用等として使用する。
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