研究課題/領域番号 |
21K19038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永次 史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90208025)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 蛍光指示薬競合置換アッセイ / RNA高次構造 / バーコードマイクロアレイ / ハイスループット検索システム / RNA結合蛍光分子 |
研究実績の概要 |
本研究ではRNA結合小分子のハイスループット検索システムの構築を目的として、すでに我々が開発したバーコードマイクロアレイ法と蛍光指示薬競合置換(FID)アッセイを組み合わせた方法論の開発を検討した。具体的にはまず、蛍光指示薬としてチアゾールオレンジ誘導体を固相に固定化し、高次構造を持つRNAライブラリと混合し、低分子が結合したRNA配列のみを分離し、DNAマイクロアレイに伏すことで蛍光分子のRNAに対する親和性情報を取得した。得られた情報からランク上位及び下位のRNA配列を選択し、蛍光滴定によりそれぞれの蛍光指示薬のRNAに対する親和性を求めたところ、ランクの妥当性を示すことができた。さらにこれらの情報から疾患に関連するRNA配列(pre-miRNA、G4RNA)を選択し、化合物ライブラリを使用して、チアゾールオレンジ誘導体を用いた蛍光競合置換アッセイにより標的RNAに対するヒット化合物の探索を行った。その結果、用いる蛍光指示薬の種類によって標的RNAに対して結合するヒット化合物が異なることを見いだした。また蛍光滴定実験によりヒット化合物のRNAに対する見かけの解離定数を算出したところ、すべてのヒット化合物が数マイクロモルから数十マイクロモル程度の結合を示し、本アッセイの妥当性が示された。さらに蛍光指示薬の構造多様化を目指して、RNA結合性ユニットとしてGクランプ構造(G-clamp)及び蛍光性部位であるチアゾールオレンジ(TO)を複合化した分子を合成した。さらにバーコードマイクロアレイ法により得られたGクランプ構造の結合情報から、ランク上位のRNA配列を選択し、TO-G-clampのみかけの解離定数を算出した。その結果、TO-G-clampは結合ユニットのG-clampの選択性を維持していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、蛍光指示薬のRNA高次構造に対する大規模情報取得技術として、RNA高次構造ライブラリからバーコードマイクロアレイ法を用いた方法論を提案している。本法を用いて得られたRNA結合情報を元に、化合物ライブラリを用いたFIDアッセイを行うことで、特定のRNAに結合する分子をハイスループット検索することにすでに成功している。さらにFIDアッセイの欠点として、蛍光指示薬と対象化合物の結合場所が異なるために、実際に結合する分子を見逃す可能性がある。この欠点の改善法として、蛍光指示薬にRNA結合性ユニットを複合化し、構造造多様化する方法が考えられる。当初の計画にはこの方法論は記載していなかったが、今回、この点についても検討を行い、新たな蛍光指示薬の開発に成功していることから当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに提案した研究目的であるRNA結合小分子のハイスループット検索システムの構築及びこの方法論を用いて、化合物ライブラリから標的RNAに結合するヒット化合物の探索にも成功した。今後はさらに得られたヒット化合物のRNA選択性をバーコードマイクロアレイ法により解析するために、ヒット化合物を固相に固定化し、結合配列を解析することでヒット化合物の医薬品シード化合物としての性質を評価する。本法で得られる情報から、強い結合性と高い選択性を持つRNA結合分子が得られると期待される。さらにヒット化合物の骨格を持ったフォーカスドライブラリを用いたFIDアッセイを行い、構造活性相関について検討する。また得られたヒット化合物をもとに部分的に構造を改変した化合物を合成し、ヒット化合物の結合様式の解明及びRNA結合分子のデザインのための新たな知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナの影響で出張にかかる旅費の支出が全くなかった。次年度は学会発表などに必要な旅費に支出する予定である。また次年度にはアッセイに必要なRNAの購入費が必要となるので、その購入費に使用する予定である。
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