研究課題
我々は、連続ハイブリダイゼーションによって集合体を形成する配列を持つ1対の化学合成ヘアピン型核酸を作成した。試験管内実験で化学合成ヘアピン型核酸がmiRNAを起点にして集合体を形成することをゲル電気泳動で確認した。続いて、化学合成ヘアピン型核酸対を細胞導入剤とともにHeLa細胞に加えると細胞質でmiRNAを起点にして集合体を形成した。核酸の蛍光標識のFRETの蛍光顕微鏡観察によって観察を行った結果、細胞質内で相分離を引き起こして液滴状顆粒を形成していた。さらに、FACSで解析すると、標的のmiR-21を過剰発現した細胞(HeLa細胞)でFRET由来の強い蛍光が現れたのに対し、miR-21の発現量が小さい細胞(HEK293T細胞)ではFRET由来の蛍光が弱かった。したがって、相分離の形成は、複合体形成のきっかけになる標的miRNAの存在量がカギになることが示された。この2年間の研究で、当初予定していた、化学合成ヘアピン型核酸によって生じた相分離液滴の「流動性」「粘度」「屈折率」について検討する時間は得られなかった。しかし、細胞質内で相分離を引き起こすことやその原因が自然免疫関連タンパク質cGASの結合によること、さらにはその複合体形成が細胞死へ至らしめることが明らかになり、新たな部類の核酸医薬品のタネを見つけることができた。将来的には、化学合成ヘアピン型核酸対についてさらに検討を加えることによって他のタンパク質をトラップして効率的にノックダウンできる相分離系を作成したい。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 6件)
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