研究課題/領域番号 |
21K19042
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 克典 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00403098)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | パターン認識 / 糖鎖クラスター / パトロール分子 / 生体内合成化学治療 / がん |
研究実績の概要 |
昨年度に光を駆動力とする体内パトロール分子の合成を実現したが、短波長の光照射による細胞障害性や不十分な光異性化による移動効率において問題が生じた。そこで、光に加えて体内での化学反応を駆動力とする分子の開発も行ってきた。これまでに、生体直行性官能基を含む糖鎖クラスターを合成するとともに、化学反応により糖鎖を変更して、新しい糖鎖パターンを構築できることが分かっていた。そこで本年度では、この糖鎖パターン認識の変更をマウス体内で実施することを試みた。 まずはデザインした生体直行性反応が、血中内でも良好に進行するかどうか調べた。生体直行性官能基を含む糖鎖クラスターに対して、血中内で試薬を加え、生じる糖鎖クラスター誘導体の質量分析を解析した。その結果、予想通り生体直行型の反応が進行して、糖鎖が変更されていることが分かった。この際、加える試薬の濃度に応じて糖鎖の変換率が向上し、体内で自在にパターン認識を変更できる可能性が示唆された。そこで、生きているマウス体内の静脈から、近赤外線領域に吸収を持つ蛍光色素で標識した糖鎖クラスターを導入した後、さらに静脈から試薬を作用させた。その結果、加える試薬の濃度や条件に従って蛍光色素の体内分布が変化した。糖鎖パターンの変更に従って、予想されたように血中から臓器、あるいは臓器から血中へと移行した。 以上の結果より、化学反応を駆動力として糖鎖クラスターの糖鎖パターンが体内で変化して、臓器や血中を移動することを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の光刺激ではないものの、糖鎖パターンを化学的な刺激によって体内で移動をすることを確認できた。従って研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、化学反応を用いて糖鎖パターンを変更することによって、体内で分子が移動することが分かった。そこで今後は、がんの間を移動させることができるか検討する。さらに移動分子に対して遷移金属触媒の機能を付与することによって、それぞれのがんで選択的に分子を合成できるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定であった光刺激を用いる計画に不具合があることを確認し、より迅速に成果を得るために、主に化学反応を駆動力とする計画に変更した。このため、本年度中にがんの移動と選択的な分子合成まで検討することはできなかった。しかし、体内での移動を確認したので、次年度では繰越した研究費を当初の予定通り消耗品費として主に使用し、当初の計画を実現する。
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