研究課題
昨年度に得られたFTOの点変異体の性質に関して、詳細な検討を行った。その結果、点変異体単独ではオリゴ中に含まれるm6Aの脱メチル化活性は顕著に低下する一方で、RNA結合タンパク質PUFとの融合体は、PUF結合配列近傍に存在するm6Aを選択的に脱メチル化できることがわかった。また、PUF結合配列中もしくは2塩基のみ離れた位置に存在するm6Aはほとんど脱メチル化することができないが、4~10塩基離れた位置に存在するm6Aを脱メチル化した。また、PUFとFKBP、FTO変異体とFRBとの融合体は、FKBPとFRBを会合させるリガンド分子であるラパマイシンが存在する時にのみ、PUF結合配列近傍のm6Aを脱メチル化した。PUFとFTOとをつながるリンカー領域にFKBP-FRBヘテロダイマーが存在している場合においても、PUF結合配列から4~10塩基離れたm6Aの脱メチル化が認められた。また、細胞内への適用を目指して、CRISPR-dCas13とFTO変異体とを融合させたタンパク質や、加えてリガンド応答系を構成する融合タンパク質を発現するベクターを作製し、標的サイトに結合するガイドRNAとともに用いた。体内時計制御遺伝子を標的としてNIH3T3細胞への導入を試みたが、研究年度内においては、時計遺伝子発現リズムの変動を確認することはできなかった。細胞への導入効率が低いことが一つの原因と考えられる。今後、条件を整えていく必要があるが、標的選択性が高く、またリガンド依存的な機能を発現する脱メチル化酵素FTOの本変異体は、種々の生命現象の解明に向けて役立つものと期待される。
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10.1002/asia.202200367
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