研究課題/領域番号 |
21K19048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00444563)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / ミスフォールディング蛋白質 / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
小胞体に炎症や有害化学物質などのストレスがかかると、ミスフォールディング蛋白質が小胞体に蓄積し、糖尿病や神経変性疾患等の様々な疾病を誘発することが知られている。ミスフォールディング蛋白質の可視化技術は、疾病時の細胞のストレス状態に関する情報を与え、ミスフォールディング蛋白質が関与する疾病の発症機構の解明に有用であると期待される。そこで、本研究では、溶媒環境に応答して蛍光強度が変化する環境応答性蛍光色素を利用して、ミスフォールディング蛋白質を検出する技術の開発に取組んだ。 この技術を開発するうえで、PYPタグラベル化技術とフォールディングセンサー蛋白質を利用する。フォールディングセンサー蛋白質は、ミスフォールディング蛋白質を認識・結合するユニットとして用い、この蛋白質をPYPタグラベル化技術により環境応答性蛍光色素でラベル化する。ミスフォールディング蛋白質は、疎水領域が蛋白質外側に出ているため、環境応答性色素がその疎水部と相互作用し蛍光特性を変化させると考えた。そこで、この色素にPYPタグリガンドを連結した蛍光プローブを合成した。PYPタグリガンドとしては、近年開発に成功した高効率蛋白質ラベル化が可能な新規リガンド化合物とした。合成は計12ステップで行い、HPLC及びNMRで目的化合物の構造並びに純度を確認した。このプローブを用いて、PYPタグと反応させラベル化実験を行ったところ、PYPタグをラベル化できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛋白質のラベル化プローブの合成が終わり、蛋白質のラベル化反応も確認できた。また、用いる色素の環境応答性も確かめており、溶媒条件に応答して蛍光強度が変化することも分かっている。当初、プローブ合成及びそのキャラクタリゼーションを行うことを目標としていたので、概ねそれは達成できたといえ、当該区分が妥当だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フォールディングセンサー蛋白質にPYPタグを融合させた蛋白質を発現・精製し、ミスフォールディング蛋白質を検出できるかを検証する。また、細胞内で、開発したプローブで蛋白質のラベル化反応が起こるかを明らかにするとともに、細胞にストレス反応を与えて生成するミスフォールディング蛋白質を検出できるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の研究成果から、プローブに組み込んだ蛍光色素とPYPタグリガンドを連結しているリンカーの長さによって、蛍光色素とタンパク質の相互作用が変化し、蛍光検出感度に影響を与える可能性が見出されたため、2022年度の研究計画を再検討した。この結果実験方針にも変更が生じ、予定していた試薬の購入を取りやめたことで未使用額が生じた。この未使用額は、計画見直し後、2022年度に実施するタンパク質ラベル化実験と蛍光測定・イメージング実験の試薬購入経費に充てる予定である。
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