研究課題/領域番号 |
21K19063
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮腰 昌利 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (60755809)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 転写後調節 / small RNA / 3´UTR / オペロン / 代謝 |
研究実績の概要 |
原核生物のオペロンmRNAは複数のタンパク質をポリシストロニックにコードするだけでなく、その3´UTRから遺伝子発現制御能を持つsmall RNA (sRNA) を生成する。単独の転写産物として発現する通常のsRNAは、多くの場合標的mRNAの5´UTRと塩基対形成して、翻訳阻害もしくはmRNA分解を引き起こす。本研究は、mRNAの3´UTRからプロセシングを経て生成するsRNAが通常のsRNAと同様に、実際に細胞内で標的mRNAと塩基対形成するのか、もしくは3´UTRに制御配列を持つmRNA自体が標的mRNAと塩基対形成することが可能であるかを検証する。 共焦点レーザー走査型顕微鏡、活性化確率的光学再構築顕微鏡 (dSTORM)を用いてRNA局在を解析した。大腸菌の3´UTRプロセシングに必須のエンドリボヌクレアーゼであるRNase Eの野生株もしくは温度感受株を比較したところ、プロセシングの阻害によって制御性3´UTRと標的5´UTRの共局在性が減少する傾向にあることが示された。 3´UTRに制御配列を持つmRNA自体が標的mRNAと塩基対形成することが可能であれば、塩基対形成するmRNA分子間をリボソームが連続して翻訳する可能性が想定された。異なる遺伝子座から翻訳されるタンパク質が複合体を形成することが可能であるかを検証するため、AlphaFold2による複合体予測解析を行った。ポリシストロニックにコードされる同一オペロンの遺伝子産物は既知のタンパク質構造と合致する複合体が予測されたが、異なるオペロンの遺伝子産物はヘテロ複合体を形成しないことが予測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超解像顕微鏡解析によって原核細胞におけるRNAの局在性を観察することに成功した。制御性3´UTRと標的5´UTRの塩基対形成にはRNase Eによるプロセシングが必要であることが示唆された。当初の予想に反して、塩基対形成する2つのオペロンから発現するタンパク質は複合体を形成しないことが予測されたが、今後さらに実験的に解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
制御性3´UTRと標的5´UTRの塩基対形成にはRNase Eによるプロセシングが必要であることを示唆する超解像顕微鏡解析の結果を確かめるため、RNase E切断部位変異、中途ストップ変異、ノンストップ変異など各種変異株を作成して遺伝子発現解析に供する。また、異なる遺伝子座から転写される2つのオペロンを連結して同一遺伝子座に挿入した変異株を作成し、遺伝子発現や代謝産物の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
AlphaFold2によるタンパク質複合体予測によって実験計画を修正し、物品費の支出が減少した。次年度は非常勤研究員の雇用費、論文投稿費に充てる。
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