研究課題/領域番号 |
21K19064
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 崇史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50740346)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | アミノ酸 / 時空間的活性ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本研究では、アミノ酸を起点とする代謝物質群の変動情報を『代謝物質コード』として定義し、代謝物質コードを感知するメカニズムや、その情報が解読されて、特定の表現型に至る背景機序を明らかにすると共に、それを自在にコントロールすることができる手法を開発することで、代謝物質コードの理解と制御を試みる。 2021年度は肝臓癌由来細胞株を異なるアミノ酸環境条件下で培養し、その際のトランスクリプトームとメタボロームの解析を行った。その結果、各アミノ酸条件下で変動する遺伝子群や代謝物質を同定することに成功した。現在、verificationを行っている。 またその間に、NCI60のオミクス情報を用いて、トランスクリプトームとメタボロームの関係性を検討した。具体的にはトランスクリプトームからメタボロームが推定できるかどうかを検討したが、回帰分析では推定が難しいと判断した。また60種のがん細胞株を特徴付けているトランスクリプトームやメタボロームの抽出を行った結果、現在までにメタボロームに関しては特定のメタボロームを抽出することに成功している。その中にはアミノ酸が含まれており、生命システムにおけるアミノ酸の重要性を裏付ける結果であると考えている。 さらにアミノ酸組成の変化が時空間的なシグナル活性ダイナミクスに与える影響を検討するため、mTORC1やAMPKなどのバイオセンサーを用いた実験系の確立を進めている。特にmTORC1のバイオセンサーはFRETベースであるが、レンジがせまいため、蛍光タンパク質の組み合わせやリンカーの導入などによって改善できないか検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度までに各アミノ酸環境条件下におけるトランスクリプトームとメタボロームの解析が完了している。 またNCI60のデータベースから生命システムにおけるアミノ酸の重要性を裏付ける結果を得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は2021年度に得た各種アミノ酸環境下における肝臓がん由来細胞株のトランスクリプトームとメタボローム情報から、アミノ酸の変化情報が、どういった遺伝子発現制御系に伝わっているのかを明らかにする。またNCI60のデータを合わせることで、より詳細な理解を試みる。現段階ではトランスクリプトームからメタボローム、またはメタボロームからトランスクリプトームの推定はできていないが、ここの推定ができ、かつその際にアミノ酸が重要であるという証拠をつかむことができれば、研究が大きく進展されると期待している。 また2022年度は培養液中のアミノ酸組成の変化が細胞内にどういった変化をもたらすのかを時空間的なシグナル活性ダイナミクスの観点から検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
代替の方法が見つかったため次年度使用額が0円とはならなかった。本金額については2022年度に実験に必要な機器や試薬類の購入と併せて使用する。
|