前年度にピロロキノリンキノン(PQQ)により活性化することを見出した代謝物感受性Gタンパク質共役型受容体であるGPR35に関して、ドッキングシミュレーションによる解析を行った。ヒトGPR35の結晶構造は報告されていないため、相同性の高いリゾホスファチジン酸受容体を鋳型としてモデルを作成した。ドッキングシミュレーションの結果、PQQはGPR35の複数のアミノ酸残基と水素結合を形成していることが予想された。これらのアミノ酸に関して、それぞれアラニンに置換した変異体を作製し、PQQによる活性化を評価した。その結果、あるアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体のみ、PQQによる活性が減弱した。GPR35の内因性アゴニストであるキヌレン酸による活性化は減弱しなかったことから、このアミノ酸残基はPQQの認識に関与していることが示唆された。 PQQとGPR35の直接的な相互作用を解析するため、前年度作製したPQQのフォトアフィニティープローブを用いた解析を行った。GPR35を発現させたHEKL293細胞に、PQQフォトアフィニティープローブを投与後、UV光を照射しクロスリンクさせた後、タンパク質を回収し、クリック反応によりビオチン標識させた。このサンプルをアビジンビーズでプルダウンさせたところ、GPR35が共沈殿されることが確認された。 本研究では、PQQが直接GPR35と相互作用することにより活性化することを明らかにした。これはPQQの新しい機能性の発見に繋がるものと期待される。
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