細胞傷害性T細胞cytotoxic T lymphocyte(CTL)やナチュラルキラー細胞への遺伝子導入法を確立するために、前年度の実験結果を踏まえて、マウス細胞傷害性T細胞(CTL)由来CTLL-2細胞を選択し、ヌクレオフェクションによる遺伝子導入の条件検討を行った。その結果、EGFPもしくはLAMP1-EGFPを安定発現する少数のクローンが得られたが、Perforin-LAMP1(325-417)-EGFPやGranzyme_B-LAMP1(325-417)-EGFPを安定発現するクローンを得ることができなかった。そのため、遺伝子導入効率を上げるための試みとして、発現ベクターの改良を行った。制限酵素PvuIの切断部位を1箇所にするための変異導入に加えて、C末端にEGFPとエピトープタグFLAGを連結した発現ベクターを新たに構築し、融合遺伝子を挿入した。PvuIで直鎖状にした発現ベクターを用いてヌクレオフェクションを行った結果、EGFP-FLAGとLAMP1-EGFP-FLAGに加えて、Perforin-LAMP1(325-417)-EGFP-FLAGとGranzyme_B-LAMP1(325-417)-EGFP-FLAGを安定発現するクローンを樹立することに成功した。これらのすべての安定発現クローンでは、導入した融合遺伝子の発現が確認され、内在性パーフォリンの発現も検出することができた。以上の結果から、本研究では、可溶性タンパク質(Perforin、Granzyme B)と膜貫通タンパク質LAMP1の融合タンパク質を安定発現させたCTLクローンを樹立することに成功し、細胞傷害顆粒のアフィニティー精製を行うための実験材料を構築できた。
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