研究課題
トリテルペン配糖体(以下、サポニンと記述する)は植物が生産する有用物質であり,有名なものに甘味料等として使用される甘草のグリチルリチンやマメ科植物が共通して産生するソヤサポニンがある.本研究では,植物が産生する有用物質であるトリテルペン配糖体(以下、サポニンと記述する)の生合成に関わる酵素タンパク質が小胞体膜上で「代謝酵素複合体(メタボロン)」を形成し生合成中間体を拡散させずに酵素間で受け渡すことによって生合成を円滑化する「チャネリング」機構が存在するかを検証するとともに,人工的にメタボロン形成を促進することによって微生物細胞におけるサポニン生産の生成量増加が可能かを検証する.2022年度は,膜タンパク質の相互作用解析に適した酵母ツーハイブリット法であるスプリットユビキチン法を用いて,サポニン生合成関連酵素について広くタンパク質間相互作用の有無を調べた.具体的には,甘草およびミヤコグサ由来のオキシドスクアレン環化酵素,シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450),糖転移酵素(セルロース合成酵素様タンパク質およびファミリー1 UGT)間の直接的な相互作用を調べた.その結果,オキシドスクアレン環化酵素の一種であるβ-アミリン合成酵素と糖転移酵素(セルロース合成酵素様タンパク質,CSyGT)の間に直接的な相互作用を認めたが,P450間との相互作用は認められなかった.そのため,P450とβ-アミリン合成酵素/CSyGTとの間を仲介するアダプター分子が存在する可能性も考慮し,シロイヌナズナのリグニン生合成においてP450のスキャッフォールディング効果が報告されているmembrane sterol binding protein(SMBP)についても相互作用を解析すべく甘草からのSMBP遺伝子単離とベクター構築を進めた.
2: おおむね順調に進展している
サポニン生合成に関わる各酵素タンパク質間にタンパク質-タンパク質相互作用があるかを膜タンパク質の相互作用解析に適した酵母ツーハイブリット法であるスプリットユビキチン法を用いて解析した.その結果,オキシドスクアレン環化酵素の一種であるβ-アミリン合成酵素と糖転移酵素(セルロース合成酵素様タンパク質,CSyGT)の間に直接的な相互作用を認めたが,P450間との相互作用は認められなかった.そのため,P450とβ-アミリン合成酵素/CSyGTとの間を仲介するアダプター分子が存在する可能性も考慮しmembrane sterol binding proteinについても解析準備を進めた.
さらに詳細なタンパク質間相互作用の解析を行う.また,植物細胞での相互作用を解析すべくBimolecular fluorescence complementation(BiFC)法による解析も進める.酵素タンパク質間相互作用の有無と代謝産物生成量の関連を解析する.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 オープンアクセス 5件、 査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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