研究課題
廃棄プラスチックが海に流出すると、海洋を漂う間に外的刺激によりマイクロレベル、さらにはナノレベルのものへと細片化する。これらが、ときに表面に有害物質を吸着し、海洋生物による生物濃縮を介して人体に入った際に起こす未知の健康被害について危惧され始めている。近年では、プラスチック粒子は大気中にも飛散しており、皮膚を介して人体に接触していることも分かってきた。皮膚は体内への異物の侵入を防ぐ人体最大のバリアであるが、遺伝的あるいは環境的な要因により正常なバリア機能が破綻し、抗原が透過すると、抗原感作ひいてはアレルギーの発端になると考えられている。皮膚へのプラスチック粒子の接触が食物抗原の感作を促すリスクになるかを評価するため、今年度はプラスチック粒子による皮膚バリアへの影響を主に解析し、以下①と②の成果を得た。①ヒト角化上皮細胞株Hacat細胞や、マウスの皮膚上皮の初代培養細胞を様々な粒径のプラスチック粒子で刺激したところ、ナノレベルのプラスチックが極めて強い細胞傷害性を示すことが分かった。ナノプラスチックによる細胞傷害に伴い、炎症性サイトカインIL-1αをはじめとする様々なタンパク質が細胞外に放出されていることを確認した。IL-1αの放出は、アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患の発症や増悪と深く関係するTNF-α、IFN-γ、IL-17の刺激で大きく亢進することも分かった。②ナノレベルのプラスチック粒子による皮膚上皮細胞の細胞死の誘導に関わる分子機序の解明を試みた。Cytochalasin D処理をしても当該応答を防げなかったことから、粒子の取り込みに貪食を必要としないことが分かった。また、インフラマソーム応答を担うNLRP3やCaspase-1などの遺伝子を欠損したマウスの皮膚上皮細胞においても当該応答は防げなかった。また、これらに関連して学会や学術誌において研究報告を行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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