研究実績の概要 |
光合成生物は、太陽光エネルギーを捕集するために集光性色素タンパク質(Light-harvesting complex, LHC)を発達させてきた。LHCは光合成生物毎に種類が異なり、結果として見た目の色の違いが生じる。色の要因は可視光を吸収する色素分子にあり、主要色素としてクロロフィル(Chlorophyll, Chl)とカロテノイド(Carotenoid, Car)が存在する。もしLHC内のChlやCarの種類および結合様式を自在に設計することができれば、可視光領域の全波長を吸収するLHCを創ることが可能かもしれない。本研究は、分子設計した褐色LHCを用いてアポタンパク質に対する色素分子の結合選択制およびホロタンパク質の機能を紐解くことにより、吸収波長を変化させた褐色LHCの分子メカニズムを明らかにする。また、褐色LHCの研究を足掛かりとし、広範囲の可視光を捉えることができるLHCの創出を目指す。 最終年度では、褐色LHCアポタンパク質と陸上植物の色素分子の再構成を試みた。発現系大腸菌C41(DE3)を用いて、LHCを封入体へ発現させた。Chl a, Chl b, luteinといった陸上植物由来の色素混合物と封入体を混ぜ、リフォールディングを試したところ、陸上植物の色素を結合したリコンビナント褐色LHCが精製できた。これは、LHCが色素分子種に依存しない色素結合能を有していることを示唆した。しかし、色素の結合が緩く、精製条件によっては脱離してしまうことが判明した。これは前年度の褐色色素の再構成と同じ結果となった。
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