研究課題
昨年度、COPII小胞の形成を負に制御する2つの候補遺伝子TRF5とYIP3を同定した。TRF5はnon-canonicalポリAポリメラーゼをコードする遺伝子で、YIP3はCOPII小胞に局在する機能未知タンパク質をコードする遺伝子である。そこで、本研究では、後者の遺伝子に着目し、昨年度作製したYIP3とSEC12遺伝子との二重変異株を用いて、COPII小胞を介したタンパク質の輸送におけるYIP3の役割を解析した。その結果、YIP3の破壊はsec12-4変異の輸送障害を部分的に抑圧することが分かり、YIP3がCOPII小胞を介した小胞輸送を負に制御している遺伝子であることが示唆された。また、転写因子の欠損株で発現が大きく変動した220の遺伝子の内、発現が増加した47遺伝子について、sec12-4変異株にプラスミドを形質転換し、過剰発現させて表現型を抑圧する多コピーサプレッサーをスクリーニングし、COPII小胞の形成を正に制御する候補遺伝子の取得も試みた。その結果、メチオニン代謝に係る多数の遺伝子が多コピーサプレッサーとして機能することが明らかとなった。さらに、YIP3の遺伝子産物と物理的相互作用することが知られているレティキュロンタンパク質をコードする遺伝子RTN1を破壊させたsec12-4変異との二重変異株の作製も行った。シロイヌナズナの解析においては、YIP3ホモログの破壊株とSEC23破壊株の掛け合わせによって二重変異株の作製を現在進めている。YIP3ホモログのひとつであるAtPRA1.B3の破壊株は、花粉壁の外層を構成するエキシンが異常になっており、SEC23破壊株と同じ表現型を示すことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、昨年同定したCOPII小胞の形成を負に制御する候補遺伝子YIP3の役割について、YIP3とSEC12遺伝子との二重変異株を用いて遺伝学的に解析した。その結果、YIP3がCOPII小胞を介した小胞輸送を負に制御している遺伝子であることが示唆された。また、COPII小胞の形成を正に制御する候補遺伝子も取得するため、sec12-4変異による表現型を抑圧する多コピーサプレッサーをスクリーニングし、メチオニン代謝に係る遺伝子が多コピーサプレッサーとして機能することを見出すことができた。さらに、本年度の計画であった、YIP3の遺伝子産物と物理的相互作用することが知られているレティキュロンタンパク質をコードする遺伝子RTN1を破壊させたsec12-4変異との二重変異株も作製できた。以上の結果から、ほぼ当初の計画通り、順調に進展している。
2022年度で作製したRTN1遺伝子とSEC12遺伝子との二重変異株を用いて、COPII小胞形成におけるRTN1の役割について解析を行う。また、多コピーサプレッサーとして取得されたメチオニン代謝関連遺伝子がCOPII小胞の形成にどのように関わっているかについても調べる予定である。さらに、シロイヌナズナの二重変異株の作製も継続して行い、作製が完了次第、表現型の解析を行う。
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Planta
巻: 257 ページ: 64-82
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https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/70644