研究課題
昨年度の解析により、酵母の機能未知遺伝子であるYIP3がCOPII小胞を介した小胞輸送を負に制御している遺伝子であることが示唆された。YIP3はCOPII小胞に局在するタンパク質をコードする遺伝子である一方で、小胞体に局在するレティキュロンタンパク質Ret1と物理的に相互作用することが知られている。そこで、令和5年度は、Rtn1をコードする遺伝子RTN1を破壊させたsec12-4変異との二重変異株を作製し、COPII小胞を介した小胞輸送におけるRTN1の役割について解析を行った。その結果、YIP3と同様に、RTN1も破壊するとsec12-4変異の表現型を抑圧したことから、COPII小胞を介した小胞輸送を負に制御する遺伝子であることが示唆された。さらに、メチオニン代謝関連遺伝子はSEC12遺伝子以外のCOPII小胞形成に関与するSECの変異による表現型も抑圧したことから、酵母のCOPII小胞形成に深く関わりがあることが示唆された。シロイヌナズナの解析においては、昨年度、YIP3ホモログのひとつであるAtPRA1.B3がCOPII小胞を介した小胞輸送に関与している可能性が見出されたので、SEC23変異との二重変異株の作製を進めた。現在も継続中である。研究期間全体を通じて、本研究では、COPII小胞の形成が脂質代謝を起点とした転写によって調節されていることに加え、その調節にYIP3、RTN1、そしてメチオニン代謝関連遺伝子が深く関わっていることを明らかにした。
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