研究課題/領域番号 |
21K19089
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 利郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
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研究分担者 |
田中 充 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70584209)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 食品分析 / 味香り分析 / MALDI-MS / SALDI-MS / LDI-MS |
研究実績の概要 |
マトリックス剤を使用しないイオン化支援基材を見出すために、本年度はN2レーザー照射エネルギーを熱エネルギーに変換可能な「イオン化支援基材」として、市販のカーボンブラック材について検討を加えた。揮発性の香り成分(アルコール類、アルデヒド類、エステル類、テルペン類)および不揮発性の味成分(アミノ酸、有機酸、糖類、脂肪酸、核酸)を混合した溶液を候補イオン化支援基材にスポットし、ITOコートグラス接着後にそのままLDI-MS分析した。なお、MS装置内は高真空(およそ×10-8Torr)であるため、試料をGHBマトリックス剤に混合し、スポットした場合ではチャンバー内で揮発するためレーザーイオンできず、供試した揮発性成分の分析は不可能であった。他方、カーボンブラックに対して分子量の異なる同族列のポリエチレングリコール(PEG)をスポットした場合、5量体のPEGまで検出することが可能であったことから、本LDI-MS検出条件によって検出可能な化合物は、蒸気圧2.68×10-4 Torr以下のものであることが明らかになった。芳香族化合物をカーボンブラックを用いたLDI-MS分析に供した結果、DHBでは検出できなかった芳香族化合物が検出され、蒸気圧0.018 Torr(2-methyl-4-vinylphenol)の不揮発性化合物、2.68×10-4 Torr(PEGの5量体の蒸気圧)以上の揮発性成分まで検出可能なイオン化支援材であることが初めて確認された。なお、正イオンモードでのカーボンブラック支援LDI-MS分析では、いずれの揮発/不揮発成分もナトリウム付加体として検出されることが判明した。負イオンモードでは水素イオンマイナスの分子イオンが検出物であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究成果について論文化が達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
カーボンブラックが本研究の目的である揮発/不揮発性成分の網羅検出に適していることが判明したため、今後は実試料を用いて品質の判別法として適用可能かどうかを詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、コロナ禍により物品(試薬)調達に大きな遅れが生じたため、年度内での予算施行を前提とした購入が不可能であったため。
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