研究課題/領域番号 |
21K19091
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
黒木 勝久 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20647036)
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研究分担者 |
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 教授 (90295197)
永濱 清子 宮崎大学, 農学部, 特任助教 (10510456)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | チロシン硫酸化 / 大腸菌 / ブレビバチルス |
研究実績の概要 |
翻訳後修飾の一つチロシン硫酸化の機能解析手段として重要な硫酸化ペプチドの新たな合成法の確立を目指し、本年度はタグ付き基質ペプチドの硫酸化の検討とブレビバチルス発現系の作成および硫酸化ペプチドの固相抽出の条件検討を行った。まず、GSTタグ付き基質ペプチド(C4およびPSGL1)を大腸菌で作成したリコンビナントTPST酵素(チロシン硫酸化酵素)を用いて硫酸化を行った結果、タグ付きの基質ペプチドも硫酸化を受けることが明らかとなり、そのまま、大腸菌体内での硫酸化を検討したが大腸菌体内での硫酸化は確認できなかった。当初の計画通り、ブレビバチルス菌体内での硫酸化ペプチド合成に必要な基質ペプチド発現プラスミド(pNC-HisT)にC4やPSGL1、CCR5など、計5種類の基質発現プラスミドの作製に成功した。さらに、大腸菌発現用プラスミドpETに組込まれたTPST2遺伝子をブレビバチルス発現用プラスミド(pNI)に組込んだ。次に、コレシストケニン硫酸体(CCK-S)を用いて、Oasisの固相抽出条件を検討した結果、陰イオン交換の固相抽出(Wax/Max)を用い、抽出条件を見出すことが出来た。この結果から、分泌されたペプチドをタグで精製した後の未硫酸化ペプチドと硫酸化ペプチドを効率的に分離精製する手法の目途が付いた。なお、CCK-Sの検出にはMALD-TOF-MSの機器を使用した。また、ウイルス感染への応用を検討するため、CCR5のブレビバチルス発現系プラスミドを作成するとともに、新型コロナの受容体ACEIIの硫酸化を検討した。その結果、ACEIIの2カ所のチロシンが硫酸化されることを大腸菌で作成した基質ペプチドと酵素を用いた酵素試験の結果明らかにした。ACEII硫酸化ペプチドを応用したウイルス感染阻害ペプチドの作成に繋がる萌芽的な結果が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブレビバチルスを用いた硫酸化ペプチド合成法確立の準備として、GSTタグ付き基質ペプチド(C4およびPSGL1)がブレビバチルスでも用いるリコンビナントTPST酵素によって硫酸化を受けることと、硫酸化ペプチドが陰イオン交換型の固相抽出で非硫酸体と単離することが技術的に可能であることを確認できたため、今後の研究遂行を円滑に行える下準備が出来た。さらに、ブレビバチルス菌体内での硫酸化ペプチド合成に必要な基質ペプチド発現プラスミド(pNC-HisT)にC4やPSGL1、CCR5など、計5種類の基質発現プラスミドの作製に成功し、当初計画の7つまで順調に計画が進んでいる。また、ブレビバチルス発現用プラスミド(pNI)にTPST遺伝子を組込んだ発現系も構築し、それぞれの遺伝子を形質転換し、発現と精製をいつでも開始できるところまで進んだ。また、ウイルス感染阻害の検討では、新型コロナの受容体ACEIIの硫酸化を検討結果、ACEIIの2カ所のチロシンが硫酸化されることを見出し、本研究がより一層、学術的意義の高いものになることが考えられた。以上のことを踏まえ、進捗状況・達成度はおおむね当初計画のとおり、進んでいることから、順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
プラスミド発現系の構築が済んでいない残り3種類の発現系を構築し、全てのペプチドのブレビバチルスでの分泌発現を検討する。また、ブレビバチルスの生育やペプチドの発現が弱い等の問題があった際には、使用するプラスミドを低発現用プラスミドであるpNY326へと変更する。さらに、TPST酵素のブレビバチルスを用いた発現と精製、そして活性確認を行う。この酵素に関しても同様に、発現状況や精製状況によって、プラスミドなどの再検討を行う予定である。さらに、基質ぺプチドの分泌発現とTPST発現・活性確認が済んだものから、基質ペプチドと酵素の2重組換えブレビバチルスの作成を行い、その発現条件などの検討、基質ペプチドの精製と硫酸化ペプチドの精製などを行う。精製後は、MALDI-TOF-MSを用いた質量の確認後、LC-MSを用いた定量質量分析技術であるMRMでの特異的な定量解析に必要な諸条件(カラム・流速・移動相・イオン化・トランジッション)を検討し、硫酸化ペプチドおよび硫酸化タンパク質の定量解析の可能性を検討する。作成した硫酸化ペプチドの機能解析では、受容体との相互作用解析や細胞機能への作用などを解析する。さらに、新たに硫酸化を見出すことが出来た新型コロナの受容体であるACEIIの硫酸化チロシン残基の特定や細胞レベルでの硫酸化なども検討し、ACEIIの硫酸化ペプチドをブレビバチルス発現系で作成し、ウイルス感染阻害薬としての可能性なども新たに検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ下での学会参加に必要な旅費が今年度は発生しなかったため、\42,504が次年度使用額として残った。次年度は、学会参加の旅費及び試薬購入に利用する。
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