申請者はこれまで分子量10kDa程度の非常に小さなタンパク質内部でチロシン残基からo-キノン、システイン残基からスルフィン酸、それらを組み合わせて、Tyr-Cysの形成に成功した。さらに、これら結果を発展させ、天然で見られたことのないCysteinyl-Tyrosyl Quinoneの形成を達成している。本研究では、様々な位置でのTyr-Cysの形成を目指した。第1段階として、Tyr-Cysを生起する変異体を増やすため、様々な変異体構築とファインチューニングを行った。その後、出来上がった変異体を土台にして、さらなる変異導入と特性評価によるフィードバックを行った。Tyr-Cys近傍のアミノ酸残基に部位飽和変異誘発を利用してより修飾効率の良い変異体を獲得し、構造などの評価により、立体制御による形成メカニズムを検討した。すでに、58番目のヒスチジンをシステイン、108番目のイソロイシンをチロシンに変異させた変異体に存在する37番目のバリンにターゲットを絞り、部位飽和変異をTyr結果得られた変異体を精製し、構造解析を行った。セリン変異体に加え、バリン変異体を単離し、Jeffamineを沈殿剤に用いてハンギングドロップ法にて結晶化を行ったところ、単結晶が得られた。X線結晶構造解析の結果、この新たな変異によってTyr-Cysの形成効率が上昇することが分かった。さらに形成効率を向上させるため、チロシンとの相互作用が考えられる39番目のアルギニンにもターゲットを絞り、部位飽和変異誘発を利用してより修飾効率の良い変異体を獲得した。特にトリプトファン変異体では、約7割り程度の形成率を示した。
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