研究課題
我々は無数の香気成分に囲まれて生活している。ある種の香気成分は、微量でも嗅覚受容体などを介して生理機能を発揮することはよく知られているが、嗅覚通過後の香気成分の体内動態や代謝・生理機能については不明な点が多い。昨年度までに、吸入したターメロンがインタクトな形で体内臓器で検出されることを見出していた。今年度は、吸入したターメロン類の体内動態と経口投与したターメロン類の体内動態の比較を行い、両者で分布パターンが異なることを見出した(Sci. Rep. 2022)。さらに、ターメロンを吸入させた群では、高脂肪食誘導性の体重増加が抑制されることを見出した。体重増加が抑制された群では、白色脂肪組織の重量増加が抑制され、脂肪細胞の肥大化も抑制されていたが、脂肪組織内の脂質蓄積関連タンパク質およびメッセンジャーRNAには顕著な変動は観察されなかった。これらの発見は、香りと生命活動の間の未知なる関係が存在することを示すものであり、基礎的な知見の集積が必要であることを示すものであり、引き続き研究を続ける。
2: おおむね順調に進展している
研究で見いだされた成果が論文に受理されており、おおむね順調に進展していると判断される。
吸入と経口で体内分布のパターンに差がある結果は興味深く、他の香気成分でも同様の結果となるかどうかの比較解析を行う。比較解析のデータをもとに、吸入と経口で体内分布パターンに差が生じる機序を明らかにする研究を進めたい。
今年度は論文投稿に必要なデータ解析を中心に行ったため、次年度使用額が生じた。来年度は多くの条件を検討する必要があるため、人件費を計上して、集中的に実験する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Sci. Rep.
巻: 12 ページ: 11039
10.1038/s41598-022-15168-9