研究課題/領域番号 |
21K19097
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
林 謙一郎 岡山理科大学, 生命科学部, 教授 (30289136)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | オーキシン |
研究実績の概要 |
オーキシンの細胞濃度は,その極性輸送によってオーキシンを細胞内外に輸送することで調節されている。シロイヌナズナにおいては,小胞体や液胞へのオーキシンの細胞輸送に関わるオーキシン輸送体(PIN, PILS, WAT1)がと報告されている。そのうちのいくつかの欠損変異体では,オーキシンに関係した形態異常が観察されているが,オルガネラへ貯蔵されたオーキシンの分布や生理的意義は明らかとされていない。オーキシン受容体は核内に存在するため,オーキシンは核内に移送されて初めてその活性を発揮する。オーキシンの配糖体やアミノ酸複合体などのオーキシン代謝物が小胞体などの細胞内コンパートメントへ一時貯されることよって,オーキシン量が調節されることを証明する。それにより,細胞内局在化によるオーキシンの活性調節機構の解明を推進してきた。 今年度は,アミノ酸付加酵素GH3.17,オーキシンアミノ酸加水分解酵素ILR1および,オーキシン配糖体にかかわる配糖体化酵素(UGT84B1)に,野生型,細胞質局在,小胞体局在,核局在シグナルを付与した GFPをN末端,C末端に融合させた代謝酵素を発現する形質転換体を構築し,その局在を確認した。また,プロドラッグ活性化酵素に小胞体局在,核局在シグナルを付与して,それぞれのオルガネラで特異的にIAAを投与することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aオルガネラ局在シグナルを付与したGFPを融合した代謝酵素を発現する形質転換体(UGT84B1配糖体化酵素,GH3.17酵素,および ILR1加水分解酵素)のバリエーションを構築し,その細胞内局在を共焦点顕微鏡で確認した。また,通常のGFPを融合させた代謝酵素の発現ラインを,小胞体,ミトコンドリア,細胞質RFPマーカーラインと交配させて,2重変異体を作製し,野生型の代謝酵素の局在を確認した。その結果,GH3とDAO酵素は主に細胞質に局在し,ILR1は小胞体に局在することが確認できた。すなわち,オーキシンの代謝・再生は,異なる細胞内コンパートメントで行われており,オーキシンやオーキシン貯蔵体を小胞体で一時保管する機構が存在することが示唆された。 通常,培地などからオーキシンを投与すると細胞質から小胞体,核へと順次分配される。上記の機構(モデル)を検証するため,小胞体と核に選択的かつ直接的にオーキシンを投与するため,オルガネラ局在を人為的に制御したオーキシンプロドラッグ活性化酵素システムを確立することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に計画が,形質転換体などの植物の育成などに時間がかかり、予定していた消耗品や代謝物分析のための費用が,計画を下回った。2年目は,ほぼ計画通りの費用を使用したが,初年度の未使用額があり,最終年度は研究を加速して,物品として、代謝物分析装置などの購入を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画が,形質転換体などの植物の育成などに時間がかかり、予定していた消耗品や代謝物分析のための費用が,計画を下回った。2年目は,ほぼ計画通りの費用を使用したが,初年度の未使用額があり,最終年度は研究を加速して,物品として、代謝物分析装置などの購入を予定している。
|