研究課題
作物の器官の形を自在に操ることは、遺伝育種学や作物学において、未だ達成されていない未解決の問題である。しかしながら、個々の細胞の成長と、多細胞からなる器官の複雑な立体構造形成がどのように関与しているのかは明らかではなく、そのため、器官形状の自在な制御は未だ困難である。さらに、植物の立体形状は遺伝子と環境の双方によって複合的にコントロールされており、従来の遺伝学のみでは立体構造形成の原理をとらえることは困難である。本研究では、イネのコメの形を決定する頴花の形状をモデルケースとし、物理ベースの数理モデリングにより、器官の立体構造の形成原理を解明する。コメは世界の主要な食料の一つであり、その形は食味や収量性だけでなく、食文化などとも関連する重要な形質である。そのため、コメの形状を予測・操作できる技術はイネの品種改良や、食糧生産の安定化にとって重要であると考えられる。そのために、まず、単一の遺伝子型かつ単一の環境下において、イネの頴花発生過程をシミュレートする物理ベースのモデルを構築することとした。北海道で容易に栽培を行うことができる品種キタアケを用い、幼穂形成時における経時的サンプリングを行った。それらサンプルを用いて、穎花の概形(縦と横)の測定を行った。測定の結果、成長方向にパターンがあり、成長過程のあるタイミングでそのパターンが切り替わることが示唆された。さらに、成生過程にあるイネ頴花を、共焦点レーザー顕微鏡により時系列的に解析し、成長構造の変形過程を、器官を形成する部位毎の成長率として定量した。定量データをもとに、最終的な形状を記述できるモデルを構築した。
すべて 2023
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Planta
巻: 259 ページ: Article no., 19
10.1007/s00425-023-04300-2