研究課題/領域番号 |
21K19108
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
横山 岳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20210635)
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研究分担者 |
末次 健司 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70748839)
伊藤 克彦 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80725812)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | カイコガ / 未受精卵 / 単為発生 / 染色体構成 / 単為生殖 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、未受精卵を体内に持つ昆虫が鳥に捕食され、排泄された未消化の卵の単為発生率やその単為発生卵から孵化した個体の遺伝形質から、どのようなメカニズムで次世代が生じたのかを解析することである。 今年度、鳥類に昆虫の未受精卵が食下された場合、鳥の体温および消化液の酸により未授精卵の単為発生が誘発されると考えられ、カイコガの卵巣卵(未受精卵)に高温(温湯)処理を施すことによって誘発される単為発生個体について、その発生機構について遺伝学的に検討を行った。 温湯処理によってカイコ未受精卵の80%以上が単為発生した。その単為発生した卵から得られた個体の性状は母親と遺伝形質を示し、不還元型の単為発生が誘発されていた。カイコは2n=56であり、28本の染色体を一対有している。母親と単為発生個体の性染色体以外の27本の染色体構成をそれぞれの染色体上の分子マーカをPCRにより解析し、母蛾と単為発生個体が同じ染色体構成であることを明らかにした。また性染色体については交配実験から次代の性比および性クロマチン数を調査することによって、母蛾と単為発生個体が同じであること明らかにした。28本のすべての染色体構成が母親と同じことから、温湯処理によって誘発された不還元型の単為発生個体は母親のクローン個体であることが明らかにした。また、単為発生個体の細胞の数%が倍数化し、4n細胞も僅かだが混在することが示された。 これらの遺伝学的解析結果から、鳥類にカイコガの未授精卵が食下され、未受精卵が不還元型の単為発生した場合、その単為発生個体は母親と同じ遺伝子型のクローン個体であることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、未受精卵を体内に持つ昆虫が鳥に捕食され、排泄された未消化の卵の単為発生率やその単為発生卵から孵化した個体の遺伝形質から、どのようなメカニズムで次世代が生じたのかを解析することである。 鳥類が昆虫を捕食した場合、昆虫の体内の未受精卵が消化されず、また鳥の体温と消化液によって未受精卵が単為発生すると考えられる。カイコガの未受精卵の単為発生の誘発については遺伝的解析より発生機構が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
カイコガ以外の昆虫の単為発生について、カイコガを用いた結果を基に実験を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、昆虫の採集の出張ができなかったため、カイコガを用いた単為発生個体の遺伝的解析を優先した。次年度は野外での昆虫の採集とNBRPからの昆虫の分譲と行い、カイコガ以外の昆虫も用いて調査を行うこととした。
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