研究課題/領域番号 |
21K19116
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮竹 貴久 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (80332790)
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研究分担者 |
安井 行雄 香川大学, 農学部, 准教授 (30325328)
日室 千尋 琉球大学, 農学部, 協力研究員 (60726016)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 不妊虫放飼法 / 外来生物 / 抵抗性 / 乱婚性 / モデル検証 / コクヌストモドキ / アリモドキゾウムシ / 対抗進化 |
研究実績の概要 |
当該年度は、コクヌストモドキを不妊化する方法を確立し、以下の実験進化を実施した。不妊オス集団中に、不妊雄など雌にとってのハズレ雄が含まれる時、もし雌がそれを識別できるなら、雌はハズレ雄との交尾もしくはハズレ雄の精子を用いた受精を回避すると推測できる。一方で、雌がハズレ雄を識別できない場合には、多雄交尾を行う雌が繁殖失敗のリスクを低減し、適応度の減少を防ぐことができるため、雌の交尾頻度が上昇するかもしれない。本研究では、コクヌストモドキを用いて、放射線照射によって人工的に不妊化した雄を含ませた集団で15世代に渡って累代飼育する実験進化の手法によって雌の進化的応答を調査した。その結果、不妊雄を含ませて累代飼育した集団(処理系統)の雌は、不妊雄を含ませなかった集団(対照系統)の雌と比較して、交尾を行う回数が有意に多かった。また、処理系統の雌を1回目に正常の雄、2回目に不妊雄と交尾させたときの、雌の産んだ卵の孵化率と、対照系統の雌を1回目に正常の雄、2回目に不妊雄と交尾させたときの、雌の産んだ卵の孵化率との間に差は見られなかった。以上のことから、本種の雌は、不妊雄の精子を用いた受精を回避することができず、その代わりに多雄交尾をすることで繁殖殖失敗のリスクを分散させるbet-hedging polyandryが進化したことが示唆された。新型コロナ禍のため実際に不妊化法を実施しているアリモドドキゾウムシの反応は研究は、その準備段階にとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの拡大のため、沖縄における野外実験の実施が限られたものになっている。
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今後の研究の推進方策 |
不妊オスに対するメスの対抗進化実験を継続して行い、直接反応と間接反応を調べる。間接版のとして、乱婚性の発達した系統におけるオスの求愛・配偶・繁殖行動の相間反応と、生活史形質における雌雄の相間反応を調べる。また、進化実験区の実験設定を変更し、メスに乱婚性よりも抵抗性が生じやすい進化実験設定を実施し、新たな実験進化にも取り組む。新型コロナの状況次第では、沖縄で実際に不妊化法が実施されているアリモドキゾウムシの野外個体群における、不妊オスの選択圧にさらされた集団での進化的反応も調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染の影響を受けて実験の一部の開始が当初の計画よりも遅れたという状況があり、そのため翌年度分として請求した。翌年度分として請求した助成金は、今年度に開始する一部の実験に使用を計画している。
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