研究課題/領域番号 |
21K19117
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
平山 隆志 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (10228819)
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研究分担者 |
林 靖彦 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (50314084)
持田 恵一 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (90387960)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / ナノセンサー / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
申請者らは、これまでに、植物を含む生物の経時的な成長状態や生理状態データを用いた非線形の形質予測モデルを構築することにより、環境要因や遺伝要因データから生体の動態を予測することが可能であることを実証した。一方で、予測に必要なデータの取得は、現段階ではコスト、時間、労力の点で効率が低く、より簡便に生体の生理状態に関するデータを取得する技術の開発が、基礎生物学のみならずその社会実装を実現する医学、農学においても不可欠である。本研究は、センサー開発においてコスト、操作、そして倫理的な点においてもハードルが低い植物を用いて、現在注目を集めているカーボンナノチューブ(CNT/SWNT)を利用して生理状態を把握する生体センサーを開発することを目指している。2021年度は、まずその観測システムの構築をおこなった。CNT/SWNTを用いて植物体内の活性酸素の変動を観測した報告を参考に、観測システム構築を行なった。これまでに、ほぼ同様のCNT/SWNTを利用した報告例が2報あるが、互いに異なるデータもあり、その検証や改良点の抽出も含めた検証実験との位置付けである。その結果、いずれの報告とも多々で相違が見受けられたものの、タバコ葉において傷害で誘導された活性酸素を観測することに、独自に構築したシステムを利用して成功した。また、CNT/SWNTをDNAで分散させる場合の条件検討も試みた。さらに、新たな物質のセンサー開発のために、生体分子のアプタマーとして報告があるDNAの情報を探索し、それらを合成しセンサー開発を進めた。この他、異なる薄幕を用いた基盤を利用したセンサーの開発についても検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに活性酸素センサーの報告を参考に、CNT/SWNTセンサーを作成した。CNT/SWNTを合成一本鎖DNA poly(AT)15, poly(GT)15超音波処理し、DNAとの結合により分散化したCNT/SWNT、それぞれA-SWNT、G-SWNTを取得した。これらの光学的な特性をフォトルミネッセンスマッピングにより調査し、これまでの報告とは異なる波長800-850nmの励起光、980nm付近の蛍光を特定した。得られたデータを元に、近赤外光に高感が高いInGaAsカメラ、808nmのレーザー発生装置、850nm以下の波長の光を遮断するフィルターを用意して観測装置を構築し、A-SWNT, G-SWNTの過酸化水素に対する応答した蛍光の変化とそれぞれの差異を観測することに成功した。次に、A-SWNT, G-SWNTをそれぞれタバコ(Nicotinia tabacum)の葉にシリンジを用いて圧注入し、葉に傷をつけ活性酸素を誘導後経時的に蛍光を観測したところ、期待通りG-SWNTは活性酸素に応答し蛍光が減少するがA-SWNTでは変化がないことが観測された。この観測データを経時的に効率的に取得するためのソフトウエアを開発した。さらに、新たな植物ホルモン観測生体センサーの開発を目指し、SWNTと結合するDNAの検討を行なった。これまで、植物ホルモンとの結合が示唆されているアプタマーが多数報告されており、その配列を参考に合成DNAを用意した。 やや遅れている理由は、コロナ感染症による、研究機関の人的移動等の制限や、様々な物資の納入が遅れたことが、主な原因と考えている。今後は、予定通り研究が実施できると考えている
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、まず昨年度合成したアプターマーDNAを用いてCNT/SWNTセンサーを作成し、植物ホルモンを認識するセンサーの取得を試みる。この場合、励起光または蛍光の最適な波長が不明であるが、それぞれのアプターマーDNAで分散化したCNT/SWNTを他機関にいらしてフォトルミネッセンスマッピングで検査することは時間的に難しいので、マルチタイタープレートリーダーや、スペクトルカメラなどを用いてスクリーニングする方法を検討し、目的とする物質に反応するCNT/SWNTとDNAの組み合わせの探索を試みる。この方法で、良好な結果が得られない場合は、フォトルミネッセンスマッピングで検査することを再検討する。植物ホルモンに応答する分散CNT/SWNTが得られた場合は、さらにDNA配列を検討して応答の最適化を図るとともに、植物ホルモンが誘導される誘導される条件や組織に導入し、生体における植物ホルモン応答を調査・検証する。
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