研究代表者は,菌根菌と宿主植物の共生には化学物質の相互認識のみならず,宿主植物からの光シグナルが関与している可能性が高いという事実を見出している。そこで本研究ではそれを証明するために,1)菌根菌の光応答の波長特異性,2)光による共生促進の菌根菌におけるシグナル伝達,3)光による共生促進の宿主植物におけるシグナル伝達,の3つの小課題を遂行する計画とした。 小課題1については,2022年度も730 nmのFR光の存在が菌根菌の菌糸分岐等を活性化することを確認した。また,2022年度は,今まで菌糸分岐が活発過ぎて菌糸が絡み合い測定が不能であった部分に関して,液体培地中で菌糸を解す技術を開発して測定できるようにした。また,ダイズ植物の地上部へFRを照射した場合に,基部に近い根(基部から4 cm程度まで)において菌根菌の応答が顕著に見られること,逆に基部から4 cm以上の根の部分に関しては,菌根菌の応答がFR照射によって促進されていないと思われる結果を得た。これらについてはさらに実験を繰り返して再現性を確認する必要がある。 小課題2については,FR光を照射することによってFR関連のアノテーションが付された遺伝子の発現が上昇することを確認した。 小課題3に関しては,ダイズを宿主植物として抽出したRNAの品質に問題が生じたため,再度光照射した個体からRNAの抽出を行い,トランスクリプトーム解析を行う段階まで進行させた。また,ミヤコグサについても同様の解析を行うためにRNAを抽出するところまで進行させた。
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