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2022 年度 実施状況報告書

カイコの変異体を用いた胚葉分化の新たな生化学的要因の解明と昆虫制御剤開発への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K19124
研究機関学習院大学

研究代表者

嶋田 透  学習院大学, 理学部, 教授 (20202111)

研究分担者 李 允求  学習院大学, 理学部, 助教 (50847168)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード中胚葉 / 鱗翅目昆虫 / メタボローム / リピドミクス / RNA-seq
研究実績の概要

カイコの変異体「腎臓形卵」ki変異体のホモ接合の母蛾が産む卵は、外観が歪んでおり、胚発生の途中で中胚葉組織が形成されずに致死するという興味深い表現型を示す。研究代表者らは、ポジショナルクローニングにより、ki形質の原因が、新奇なペルオキシダーゼ様タンパク質をコードする遺伝子の欠損であることが明らかにしてきた。2021年度にメタボローム解析により脂質を網羅的に解析したが変異体で有意に変動する脂質を特定するに至っておらず、未知の生化学的機構に関与するタンパク質をコードしていると推定される。2022年度は、CRISPR/Cas9法により正常蚕の原因遺伝子をノックアウトする実験を行い、複数の変異系統を作出した。これら変異系統の多くは、ki変異体と同様に、卵形の異常と胚致死を伴う卵を産下した。
ki形質の原因遺伝子がコードするペルオキシダーゼ様タンパク質をクエリーとして、昆虫のみならず多様な動物のゲノム配列に対して網羅的な相同性検索を行い、相同配列の間の分子系統解析を実施した。その結果、当該遺伝子と明瞭なオーソロジーを示す配列は、チョウ目、ハエ目、甲虫目などの完全変態昆虫にのみ存在しており、不完全変態昆虫には存在しないことが明らかになった。また昆虫以外の節足動物においても、脊椎動物と同様に、オーソログと言える遺伝子は見出されなかった。したがって、このペルオキシダーゼ様タンパク質は、完全変態昆虫に特有の存在であると推定される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CRISPR/Cas9法により正常蚕の原因遺伝子をノックアウトする実験を行い、複数の変異系統を作出することに成功した。これら変異系統の多くは、ki変異体と同様に、卵形の異常と胚致死を伴う卵を産下した。この成功により、遺伝的背景を均一にした状態で比較メタボローム解析を行うことが可能になった。また、ki変異体の原因遺伝子がコードするペルオキシダーゼ様タンパク質に関して、動物における相同配列の分子系統解析を行った結果、オーソログが完全変態昆虫にのみ存在することを示すことができた。

今後の研究の推進方策

2022年度にCRISPR/Cas9法により、ki変異体の原因遺伝子であるペルオキシダーゼ様をノックアウトすることができたので、その表現型の評価を行うとともに、ノックアウト系統を活用して生理・生化学的解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

CRISPR/Cas9法による遺伝子ノックアウトを行い、変異系統を作出することに成功したが、形質評価や生化学的解析を年度内に実施することができなかったため、所要の経費を翌年に使用することにした。

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公開日: 2023-12-25  

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