微生物は“光”をどのような機構で受け取り、どのように利用しているのか?近年、数個体の真核微生物ゲノムから光受容体(ロドプシン)と酵素が融合したタンパク質が見つかり、光に応じて酵素活性をON-OFFすることが明らかになった。しかしながら、酵素型ロドプシンの遺伝的多様性や微生物への分布のみならず、機構発現メカニズムも未解明である。本研究では、真核微生物トランスクリプトームの情報解析、機能ドメインの機能予測、異種発現系を用いた機能解析などを駆使することで、酵素型ロドプシンの生物学的役割を解き明かすことを目的とする。
本年度(2023年度)はこれまでの研究で見出したロドプシン以外の機能ドメインがORFに含まれる配列を人工的に合成し、異種発現解析でその機能解明を試みた。本研究では、真核微生物のトランスクリプトームデータなどから微生物型ロドプシンを大規模に探索し、ロドプシン以外の機能ドメイン部位を持つ配列を選抜した。その結果、微生物型ロドプシン配列の約2%(約5000配列)が機能ドメインを持つ何らかの酵素型ロドプシンである可能性が示唆された。さらに、機能ドメイン部位の完全長が保存されている配列、また、発色団であるレチナールと結合できるアミノ酸が保存されている配列を選別した。人工的に合成したそれらの配列を異種発現させることで、機能解析を試みた。複数配列の異種発現を試みたが、多くの配列はほとんど発現しなかった。今後、微量ながらも異種発現系にて発現が確認できた配列を用いて、より高発現になる条件の検討を実施予定である。十分な発現量が得られた場合は、機能ドメイン予測から推定された機能が光照射でON/OFFするかの解析を実施する。
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