研究課題
挑戦的研究(萌芽)
短時間の圧縮刺激を繰り返し受けながら形成された広葉樹の細胞壁は通常よりもセルロースを多く含む。この刺激と応答の関係を詳しく調べ、細胞壁が有する機能の理解を深めた。この刺激応答は、水平にした幹では生じたが、鉛直な幹では生じなかった。刺激の頻度については、1週間に5秒間の圧縮刺激、ときには4週間に5秒間の圧縮刺激でも、この応答は生じた。遺伝子的距離が離れた多樹種で、刺激応答は生じていたが、変化の度合いや向きは樹種によって異なっていた。
木材物理学
圧縮の刺激に対して引っ張りに強いセルロースを増やす対応はこれまで知られていない刺激応答である。本研究によって細胞壁の未知の機能の一つを知ることができた。細胞壁はセルロース微小繊維束を骨格に、リグニンを充填物質に持つ。特に、樹木の巨体を支える発達した細胞壁は力学的に優れた機能を持っている。その構造は複合材料の手本であり、本研究成果も材料設計の新しい着想の端緒となった。