研究課題/領域番号 |
21K19159
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 昌規 山形大学, 農学部, 教授 (20320020)
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研究分担者 |
山田 千佳子 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (30351216)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 脱脂米糠 / 油脂生産酵母 / 微生物油脂 / 米糠タンパク質 / 有機リン化合物 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、米油製造時に副生する脱脂米糠からタンパク質・有機リン化合物の双方を選択的に分離・精製可能なIP-EWTプロセスと脱脂米糠糖化物に含有するC5、C6糖から高不飽和脂肪酸含有油脂の生成が可能な微生物生成プロセスの双方を融合し、脱脂米糠からのタンパク質、有機リン化合物、油脂生産を可能にする脱脂米糠の完全再資源化プロセスの確立を目指した。これまでに、脱脂米糠糖化液を構成する糖質(グルコース、キシロース、アラビノース)に対する油性酵母の資化性、油脂生成能、生成する油脂の脂肪酸組成等の生物工学的基礎知見の蓄積が為されていない。そこで本年度(令和4年度)は、油性酵母の脱脂米糠糖化液を構成する糖質に対する菌体増殖および油脂生成能、生成油脂の脂肪酸組成を明らかにし、得られた各パラメーターを主成分分析(biplot)により、各菌株の油脂生産における特徴やが脂肪酸組成に与える各当成分の影響の理解を目指した。Rhodotorula sp.C7(C7株)、Rhodosporidium paludigenum C10(C10株)、Sporidiobolus pararoseus,、KX709872(KX株)の3株を用いた。油脂生産試験(好気-回分培養)の結果、C7株は、脱脂米糠糖化液を構成する糖質(単糖)を含む単一炭素源培地に おいて、3種それぞれの糖質に対する資化性が高く、3種の糖質を含有する脱脂米糠糖化液培地においても、優れた菌体増殖、油脂生産性示した。さらに、得られた培養結果を主成分分析(biplot)に供した結果、リノール酸及びリノレン酸含有率は菌体増殖、油脂・EPS生成量と負の相関関係を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の脱脂米糠からの油脂生産に与える脱脂米糠糖化液のC:N、C:P比の影響に関する知見に加え、脱脂米糠糖化液を構成する糖質(単糖)を含む単一炭素源培地および3種の糖質を含有する脱脂米糠糖化液培地による油脂生産試験と主成分分析(biplot)により、本系に適した油性酵母の選択、高油脂生産、生成する油脂の不飽和度(脂肪酸組成)、副産物であるEPSの関連性が明らかとなり、本系のプロセスの構築に不可欠な基礎的知見を与える結果となった。
これらの成果により、上記区分に相当する進捗状況であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目1,2として掲げる「脱脂米糠からの油脂生成能の評価と高油脂生産機構の解明」、「油脂生成に与える脱脂米糠からのタンパク質・リン成分除去効果」については、本年度に得られた研究項目1の結果より、選抜した保存菌株(油性酵母)を用いたタンパク質・リン成分除去後の脱脂米糠糖化液からの油脂生産試験を実施する。さらに、一昨年度に得られた油脂生産に与える培養液中C:N、C:P比の影響を考慮した当該糖化液からの油脂生産の最適化を通じて、副生成物であるEPS(菌体外高分子)の生成を抑えた高油脂生産を実施し、脂肪酸組成、油脂生成収率の評価を実施する。研究項目3として掲げる「脱脂米糠由来タンパク質の機能と物理化学的諸特性の評価と理解」については、未検討項目である米糠由来タンパク質の高次構造、疎水性、吸水・油特性の関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の納期が予想よりも遅れたため、上記の次年度使用額を生じた。生じた使用額の用途は、納期の遅れた物品の購入に充てる予定である。
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