研究課題/領域番号 |
21K19162
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
櫻井 清一 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (60334174)
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研究分担者 |
神代 英昭 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60431699)
石塚 哉史 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (70571016)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 工芸農作物 / 製品ライフサイクル論 / 衰退期 / 需要拡大 |
研究実績の概要 |
本年度は研究対象とする工芸農作物のうち、桑=養蚕、コンニャクについて、衰退期ながら注目される経営行動をとる企業・組織の動向を定性的に分析した。またコンニャクについて生産動向の変化を統計により分析した。 1)養蚕業に取り組む経営体は全国で200を割っている。しかし主産県である群馬県では、県の研究機関が新規に養蚕に取り組む経営体を育成するセミナーを運営している。年間20人前後が受講し、修了生よりこれまでに県内で13の新規参入を実現している。また愛媛県ではシルク博物館が展示用に入手した製糸施設を用いて県内産の繭より伊予生糸を産出し、GI(地理的表示)登録を行っている。従来の経営体の概念にとらわれずに意欲的に養蚕ないし製糸に取り組む経営体を支援することで国産優良生糸が維持されていることが分かった。 2)コンニャクの主産地である群馬県では、練りコンニャク製造業者による製品輸出に取り組んでいる。輸出に取り組む企業はいずれも中小企業であるが、欧米諸国の健康ニーズに対応できる製品をPRし、個々の取引先への輸出額は小さいものの、50前後の国・地域に製品を輸出し、販路を拡大していることが分かった。 3)コンニャクイモの生産において、新品種みょうぎゆたかの普及が進んでいる。同品種は耐病性に優れるとともに形状が丸く、機械化に適している。そのためコンニャクイモ経営体の大規模化と機械化が進み、効率的な生産を実現し、原料確保に貢献している。 4)輸出に取り組む工芸農作物との比較対象として、日本酒の輸出動向についても分析を行った。秋田県の清酒事業者の輸出動向を分析し、複数の業者が販促活動や物流において共同して取り組み、輸出に伴う様々なコストを削減することにより、中小企業でも輸出が可能となっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度もコロナ禍の制約により、対面式のヒアリング調査は困難を極めたが、年度後半よりある程度実施可能となった。対象となる工芸農作物のうち、コンニャクイモについては、群馬県に限定されるが新たな動向を把握できた。また統計による全国的動向も追跡可能となった。養蚕業については、一般的な養蚕経営体の動向を十分把握できていないが、これまでにない新規の取り組みについて、先進的なものを含めある程度フォローすることができた。また分析途上であるが、国産シルクの認証制度に取り組む養蚕農家・製糸業者・織物業者等のデータベースを構築することができた。 また、衰退期でも販売される製品・加工品は高品質のものが多く、その一部は輸出されている。輸出の動向について、コンニャクに加え比較対象として清酒の動向も分析することができた。 ただし、茶については、まだ分析に着手できていない。 上記の状況を総合的に考えると、想定以上に進展した場合とまだ着手できていない場合が混在しているが、全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は初年度、予期せぬ手続き上の問題により分担金の送付が大幅に遅れ、実質的には1年近く遅れてのスタートとなってしまった。幸い、本年度は一定の進捗をみることができた。また、残された研究課題について、1年間の研究期間延長が認められた。次年度が最終年度となるが、対象品目毎に、以下の課題に取り組む。 1)養蚕業については、国産シルク認証制度に参加する農業経営体・製糸業者・織物業者等のデータベースを用いて、認証事例はどのような企業・経営体の結びつきで形成されているか、また認証事例はどの程度増加ないし持続しているか、ネットワーク分析の手法を援用して考察する。 2)コンニャク(イモ)については、北関東の産地を主対象とし、生産面ではイモ栽培の効率化ならびに規模拡大の動向を分析する。またコンニャク製品の製造・販売については、引き続き輸出を意識した新たな販路開拓状況について考察する。 3)これまで分析に着手できていなかった茶について、主産地の栽培動向の変化と製茶の輸出における販路拡大方策について分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に会計手続き上のミスにより研究分担者への送金が大幅に遅れてしまい、実質的に分担者が研究を遂行できなかった。2年目の平成4年度もコロナ禍の影響が残り、対面式の調査に制約を生じた。そのため研究期間の延長を申請し、認められた。 次年度は最終年度となるが、対面式調査も可能となりつつあるので、延長が認められた研究費を使用し、対外調査を積極的に進め、取りまとめを行う。
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