研究課題/領域番号 |
21K19163
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芋生 憲司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40184832)
|
研究分担者 |
古橋 賢一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10779739)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 微細藻類 / 連続培養 / ミルキング / 有機溶媒 / 抽出 |
研究実績の概要 |
バイオ燃料生産のための生物資源として期待されている群体性微細緑藻Botryococcus braunii(以下、B. braunii)は、細胞分裂過程で生産した炭化水素を、乾燥藻体重量の30から50%の割合で細胞間構造体に蓄積する。そのため、他藻種と比較して本藻種は、収穫(濃縮)が容易、細胞破砕を経ずに溶媒抽出可能、バイオ燃料化のためのクラッキング(低分子化)が容易というメリットをもつ。しかし、ノルマルヘキサン等の抽出溶媒分離のための蒸留操作に要する投入エネルギーが大きいこと及び増殖が他藻種と比較して遅いことが課題となっている。そこで本研究では、上記課題を解決するために、B. braunii自身が生産した炭化水素の水素添加油を利用することで、細胞を死滅させることなく細胞外に蓄積された炭化水素のみを回収して再培養させるミルキングを同時に達成する新規プロセスを開発する。細胞分裂よりも炭化水素の回復にエネルギーが偏向的に利用されることが明らかとなれば、窒素肥料の節減や単位面積当たりの炭化水素生産能の向上のみでなく、生化学的にB. brauniiがなぜ炭化水素を生産・蓄積するのかという謎を解く手がかりになり、本藻種の実用化が加速されると期待される。 本年度は、炭化水素の抽出効率を上昇させるための培養条件の選定を行った。これまで培養時の塩濃度を変えることで、コロニー表面の構造を変化させて、有機溶媒による炭化水素抽出効率を向上できることを明らかにしている。そこで、塩濃度の条件を変えて培養した藻体を用いた、溶媒比、抽出時間と抽出効率の関係を明らかにし、ミルキングを行うべき藻体の作成条件を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭化水素の抽出効率を上昇させるための培養条件の選定を行った。これまで培養時の塩濃度を変えることで、コロニー表面の構造を変化させて、抽出効率を向上できることを明らかにしている。そこで、塩濃度の条件を変えて培養した藻体を用いて、抽出時間と抽出効率の関係を明らかにし、ミルキングを行うべき培養条件を明らかにした。また、ミルキングを行う上で、藻体生存率をパルス変調クロロフィル蛍光で測定することを考えていたが、藻体濃度の関係からよい感度が得られなかったため、微細藻類培養に適用できる二酸化炭素吸収速度装置(光合成速度測定装置)を開発した。それを用いて、次年度から自己生産炭化水素を模した溶媒での抽出・再培養実験に取り組む。以上のことから、本課題はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度からは、自己生産炭化水素を模した溶媒での抽出・再培養実験に取り組む。当初、再培養実験での藻体生存率検証には、パルス変調クロロフィル蛍光測定を用いることを想定したが、濃度等の問題から測定感度が得られたなかったため、本年度作成した微細藻類培養に適用できる二酸化炭素吸収速度装置を開発して、研究を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初で予定した測定方法を変更したが、次年度で測定機を改修するための予算として計上する。
|