研究課題
本研究は,遠心場での模型実験によって,降雨下での土中の水,空気および斜面変形を明らかにし,斜面安定に与える影響を評価することを目的とする.これまで,農研機構農村工学研究部門にて遠心降雨実験装置にて,模型斜面を用いて降雨実験を行った.遠心降雨実験では,典型的な自然斜面に見られる固い基盤の上に風化の進んだ緩い表層土から構成される小型模型斜面を用いた.固い地盤としてはシルト(DLクレイ)を用い,表層土には豊浦砂および珪砂を用い,珪砂は密度を変えて実験を行った.模型斜面は,高さ30cmで1:1の勾配を持ち,降雨下での土中水圧力と土中空気初の変化をモニタリングするために,計13個の間隙水圧計と4個の間隙空気圧計を挿入した.遠心降雨実験では土槽に固定した4つのノズルより構成された降雨装置から時間50mm相当の降雨を与え,30Gの遠心力を作用させた.実験の結果,土壌斜面における間隙空気圧(PAP)と間隙水圧(PWP)の変化は,斜面底部での斜面不安定性や斜面頂部での張力亀裂を引き起こす可能性があるが、斜面崩壊を引き起こすには,PAPの増加の影響はPWPの増加よりも小さいことが示された.この研究を通して,激しい降雨の下で間隙空気と間隙水が,斜面安定性にどのように関与するかについての新規性の高いデータを得ることができた.PAPの変化はPWPの変化に比べて斜面安定性に対して顕著な影響を持たないことが判明したが,にもかかわらず,土壌粒子の大きさや斜面の相対密度などの要因に依存するため,間隙空気の役割は斜面安定性を決定する上で依然として重要であることに注意することが重要でである.
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